髙谷敦生さんインタビュー(「あうる」70号より一部先行公開)
2022.08.02
介護はそんな軟(やわ)な仕事じゃない
髙谷敦生さん
(特別養護老人ホームフローラルさつなえ 理事・施設長)
介護の敷居を下げないで…
なんかね、介護の仕事は楽しいよ、介護へおいでよ…って聞くたびに、『違うんだよね…』と思うわけ。(笑)
介護業界は慢性的な人手不足でしょう。だから、あの手この手で介護の仕事のイメージアップに奔走(ほんそう)しているんです。若い人たちに高齢者と並んでピースさせたりしてね。(笑)
確かに、介護という仕事は誰にでも始められます。でもね、誰もが続くかっていうと、そんな甘くないんです。介護は、「高齢者が好き」「介護が好き」だけでは続かない。そんな軟な仕事じゃないですから。難しいですし、実際はもっともっと泥臭いんですよ。
だから、介護の仕事は楽しいよ、介護へおいでよ…なんて変な宣伝して、安易に敷居を下げてほしくないんです。(笑)
いつもやさしい…って難しい
この仕事に就く人はみんなやさしい人です。でも、やってみると、毎日毎日やさしくあり続けるって、こんなにも難しいものかと気づかされます。いつもやさしい…って、簡単じゃない。
介護の現場には、人に寄り添い支え護(まも)る業(わざ)みたいなものをもっている職人気質というか玄人肌の職員がいます。介護の達人、いや、介護の鉄人かな。(笑)
これって、三年や五年やったくらいじゃわからないですよ。ちなみに、自分は二〇年かかりました。(笑)
注射をしてくれる看護師さん、手術をお願いするお医者さん、当たり前ですけれど、上手な人の方がいいに決まってます。
髪を切ってもらうのだって、顔を剃ってもらうのだってそう。自信なさげな顔と震える手でハサミや剃刀を近づけられたら困りますでしょ。(笑)
お金を奮発するなら、評判のシェフの料理を味わってみたいですし、家を建てるなら腕の立つ大工さんにお願いしたい。介護だって同じですよ。
だからね…、業界のイメージアップより、介護の職人・達人たちの生き様や人物像をもっともっと紹介したらどうなの…と思うわけ。
「大人になったら、あの人のようになりたい」「転職して、あの人と一緒に働きたい」。子供たちや若い人たちが憧れるプロフェッショナルの存在をたくさんの人に知ってもらうべきですよ。
聞けば、介護は親が子供になってほしくない職業の常連なんですって。悔しいじゃないですか。(笑)
(この続きは8月5日発行予定の季刊紙「あうる」70号をダウンロードしてお読みいただけます)