ひと

松王かをりさんインタビュー(「あうる」69号より一部公開)

2021.10.01

松王かをりさん

北海道との出会いが俳句を続ける原動力に

松王かをりさん( 俳人・「銀化」同人

古都から札幌に

 生まれは奈良です。2006年に夫が北海道大学の教員となり、それで札幌に。俳句はその2年ほど前に始めたばかりでした。私が札幌に転居すると言うと、「奈良・京都にはない自然という素材がいっぱいあるので、いい俳句が作れるね」と羨ましがられました。
 確かに北海道には、向こうとは違うダイナミックな自然がたくさんありました。一方、奈良・京都にはちょっとした路地があり、そこに光は光、影は影という感じで、微妙な陰影や情緒があります。それが人の気持ちにも関係していて、こちらにはそういった綾がない寂しさ・物足りなさがあると思います。逆にこちらの方は「古都の人と違って、そのままで裏がないんですよ」とおっしゃいますよね。

作風の変化は

 自分の句を見ると、北海道に来たことがどんなに私の句を豊かにしているか、ということに気づかされます。そのまま関西にいたなら、果たして俳句を続けていたかどうか……。未知の風土との出会いが、俳句を続ける原動力になったような気がします。
 北海道には歳時記に載っていない独特の言葉があり、とても新鮮です。例えば「海明け」。春になり、流氷に閉ざされていた土地の人たちにとって、また新しい世界が開けるようで、いい言葉だなと思いました。それから「根開け」。春になって木の根っこだけ雪が解けている状態ですが、それもこちらに来て初めて知りました。

俳句が取り持つ縁

 2008年、NHKの「俳句王国」に出演しました。奈良の俳句の先生が札幌に行った私を「北海道に行った珍しい人もいるんですよ」と紹介したのでしょう。番組に来ていた方に、「札幌に来てから句会もなく知り合いも全然いません」とお話をしたら、「北海道にもあるよ。こんな人の句会に行ってみたら」と教えてくださいました。
 知り合いが誰一人いなかった私ですが、番組がきっかけで句会を紹介していただき、そこでお友達ができ、誘われて入会した「中北海道現代俳句協会」の新年会で藤谷和子さんに巡り会いました。
 俳句があったからこそ、和子さんに出会え、それが縁でインタビューをさせていただいて『最果ての向日葵』を出版することができたのだと、「俳縁」の不思議さ、有り難さを感じています。


(この続きは季刊紙「あうる」69号をダウンロードしてお読みいただけます)