内容紹介
清少納言「枕草子」に讃えられた開湯二千年、榊原温泉を知る
日本一の温泉教授と地元を知り尽くした爺(じじい)が隅々まで書きました。
神宮が伊勢の地に祀られてから湯垢離(ゆごり)に必要な温泉でした。
江戸時代には藩営の湯治場で栄えた稀有な歴史の温泉です。(帯文より)
北海道の洞爺湖温泉に生まれ、“温泉教授”の異名を持つ温泉研究の第一人者と、三重県の榊原温泉で産湯を使い、名湯の由縁を知り尽くした郷土史家による、知られざる名湯「榊原温泉」の歴史と湯の効能、人の温もりを伝えるための一冊。
目次
はじめに
第1章 産声を浴びたら、歴史ある名湯だった(執筆・増田晋作)
1.やっぱり知らない榊原温泉
2.なんと古い温泉
3.榊原の温泉と蒸し風呂
4.身近だった湯治場
5.温泉を歩いてみよう
6.里を歩いてみよう
第2章 榊原温泉ゆかりの人びと(執筆・増田晋作)
1.榊原温泉の功労者
2.私の知る善助さん ~榊原温泉復興の功労者「田中善助翁」を語る
3.芭蕉さんと榊原温泉
4.榊原家誕生の地
5.地元の榊原家のこと
第3章 榊原温泉の爺の「日々想々」(執筆・増田晋作)
大地の恵み「美人の湯」/榊原温泉はハレの湯/榊原の湯は、やっぱりパワーがありそう/温泉は湯だけではない/スローな温泉浴を/王朝時代の榊原温泉
第4章 榊原に伝わるむかし話(執筆&挿絵・増田晋作)
餅が食べたかった山の神/大滝の大蛇/嫁落とし/狸のマイバ/雪の降る夜は/天狗のおどし/つしのねずみ/肝だめし/底ぬきゃた/杵を盗んだ山の神/木造の山の神/湯始め/生きていた了庵さん/花かけ良いところ/サンザエモンさんとタヌキ/奥が谷の天狗/水浴びをしていた明神さま/とうちゃん気ぃつけてナ
伝説*神ノ木が茂る榊原/伝説*あの山は笠取じゃ
第5章 「温泉大明神」として慕われてきた射山神社(執筆・増田晋作)
1.式内 射山神社 温泉の神さまをお祀りする
2.射山神社𦾔祠の地
3.射山神社旧本殿の御鏡裏書き
4.式内射山神社の宮司
第6章 元祖「日本三名泉」榊原温泉 ~温泉と禊の深い関係(執筆・松田忠徳)
1.なぜ清少納言は『枕草子』の温泉の条で、榊原温泉の名を真っ先にあげたのか?
2.万病に効くと言われた古い時代から、今でも温泉は日本人の癒やしの象徴 ~『出雲国風土記』の温泉
3.禊のルーツを説き明かす。『出雲国風土記』に記された伝説
4.古代から現代に至るまで日本人の心を離さない、温泉が持つ「若返り」のチカラ
5.「ななくりの湯」は現在の榊原温泉か、別所温泉か?
6.伊勢神宮と榊原の結びつきをたどると、神道の禊と温泉の関係がよく見えてくる
7.松尾芭蕉は「日本三名泉」榊原温泉に関する句を残していたのか
第7章 榊原温泉の潜在的な「温泉力」を科学的に解き明かす(執筆・松田忠徳)
1.温泉の新たな評価法、「溶質と溶媒」、「酸化と還元」という発想
2.温泉は含有成分だけで効くのか?
3.酸化還元電位で、榊原温泉の潜在的な「温泉力」を科学する
4.榊原温泉の“源泉”の還元力を検証する
5.「ORP-pH関係図」から判明したこと
6.榊原の主要源泉の“抗酸化力”を検証する
7.「七栗の湯2号源泉」を活用した「源泉風呂」の造営を期待したい
8.榊原温泉の名物「源泉風呂」を検証する
9.「泉源開発 七栗の湯2号源泉」の泉源から採取した源泉で還元力を検証する
10.歴史と文化の連続性が、「日本三名泉」榊原温泉を育ててきた
第8章 入浴モニターによる実証実験から、榊原温泉の効能、その“底力”を解剖する(執筆・松田忠徳)
はじめに~実証実験の目的
1.榊原温泉での温泉浴で血圧が下がった
2.榊原温泉での持続的な温泉浴が“美肌効果”を高めた!
3.温泉浴による血流量の変化を検証する
4.皮膚(顔)の水分量を測定する
5.榊原温泉で“万病の元”の「活性酸素」を抑制、除去できた!
6.疾病に打ち克つ抗酸化能の測定(BAP test=Biological Antioxidant Potential test)
7.湯治後の「潜在的抗酸化能」を検証する ~温泉浴でどれだけ健康になったかを指標化する
8.継続的な榊原での温泉浴は、“健康寿命”の延伸につながる
参考文献
あとがき
著者紹介
松田忠徳(まつだ・ただのり)…温泉学者、医学博士、文学博士、旅行作家。
1949年、北海道の洞爺湖温泉で産湯に浸かり、中学入学まで温泉街の混浴の共同湯で育った。
国内外で大学教授を歴任し、現在はモンゴル国立医科大学教授、グローバル温泉医学研究所所長。日本で初めて温泉を学問として捉え、“温泉教授”の異名で知られる「温泉学」という分野を切り拓いた温泉研究の第一人者。温泉文化論、温泉観光学、温泉医学と、その活動は多岐にわたる。
著訳書は約150冊に及び、主な著書に『江戸の温泉学』(新潮社)、『温泉教授・松田忠徳の古湯を歩く』(日本経済新聞社)、『温泉はなぜ体にいいのか』(平凡社)、『温泉教授の湯治力』(祥伝社新書)、『全国温泉大全』(東京書籍)など。DVD『温泉教授・松田忠徳の日本百名湯』全10巻(日本経済新聞社)もある。
榊原温泉には25年以上、足げく通い、その歴史、文化、温泉分析、入浴モニターによる実証実験など、さまざまな調査、研究を行ってきた。
増田晋作(ますだ・しんさく)…郷土史家、エッセイスト。
1938年2月の寒い日に、母親のお腹から冷凍(?)のまま生まれ、地元三重県の榊原温泉の産湯で解凍され、86年が経過。
幼少の頃からのラジオ少年で、それが高じて東海ラジオ放送技術部を振り出しに社会進出。その後、長男が故に故郷に戻され、榊原温泉郵便局長、榊原公民館長を歴任。退職後は公民館講座「榊原ものしり講座」の講師、榊原小学校地域コーディネイター、学校運営協議会委員などを年甲斐もなく続けている。また2009年に「榊原温泉ふるさと案内人の会」を組織し、楽しく活動している。もちろん健康のために、榊原の朝湯と飲泉を日課としている。
地元の「三重タイムズ」紙に、コラム「里の詩(うた)」を毎週連載中(https://www.zc.ztv.ne.jp/shin/00/uta/index.html)。また「榊原温泉ホームページ」で、2022年3月まで13年半続いた人気のブログ「吾作(ペンネーム)の榊原温泉だより」を読むことができる。
本書は人生初の単行本で、本の装丁から帯作りまで、こちらも存分に堪能した。
上記内容は刊行当時のものです。