【目次】
最終回 これ以上株式市場にお金を突っ込んだら日本人の(生命と)財産は守れないだろう(2016/5/30)
第5回 ゆっくり進む今回の恐慌(2016/5/10)
第4回 相場を弄ぶ者に鉄槌を(2016/4/28)
第3回 なぜ日本人は天罰が当たっていることに気が付かないのか(2016/4/20)
第2回 NY市場もまもなく3段下げへ(2016/4/13)
第1回 3段下げに入る株式相場(2016/4/5)
5月30日
最終回 これ以上株式市場にお金を突っ込んだら日本人の(生命と)財産は守れないだろう
際限のないバラまきと金融緩和、繰り返される政治とカネの問題、公的資金を使っての相場の買い支え、どれも現在の権力者が権力者であり続ける限り、これからもまだ続くのであろう。
5月13日、日本郵政グループの2016年3月期の決算発表があった。驚くべきことに、ゆうちょ銀行総資産(204.8兆円)に占める外国証券の割合が22.1%(45.3兆円)となったのである。簡単に言うと、ゆうちょ銀行に預けた国民の預金の約4分の1が米国債に振り替わったということである。
2013/3 | 2014/3 | 2015/3 | 2016/3 | |
国 債 | 138.1 | 126.3 | 106.7 | 82.2 |
国内株式 | 3.0 | 2.9 | 3.4 | 3.5 |
外国証券 | 15.7 | 22.7 | 32.8 | 45.3 |
・ ・ |
||||
総資産残高 | 197.6 | 200.3 | 205.8 | 204.8 |
ゆうちょ銀行は2015年4月に発表した中期経営計画で、サテライトポートフォリオ(外国証券や国内株式など)の残高を2015年3月期からの3年で14兆円増やすと表明していた。しかし実際には、たった1年間で12.6兆円も増えていたのである。さらにこのところの円高で、この残高はさらに増えていることであろう。
安倍政権下の3年間では、外債残高はなんと30兆円増えた。こうやって円安、株高は作られたのである。私は「郵政は民営化とは逆の国営化の方向に向かっているのである」と書いたが、むしろアメリカ化されているのであると言った方がいいのかもしれない。
選挙と株価
5月中旬から相場が異常に底堅くなっている。しかも円安を伴っている。ということは、また年金と郵貯のお金で相場を買い支えているということだ。見え見えの選挙相場で市場は死んでいる。売買代金は今年最低水準が続いているのだ。
過去安倍政権において選挙は3度あった。
1.2013年7月21日参議院選挙
6月21日12680円(株価つり上げ開始)→その後の高値7月19日14970円
2.2014年12月14日衆議院選挙
10月31日15830円(株価つり上げ開始)→その後の高値12月8日18040円
3.2015年4月12・26日統一地方選挙
3月11日18570円(株価つり上げ開始)→その後の高値4月23日20280円
(本書第5章表5-6より)
いずれの選挙でも約1か月前から株価のつり上げが開始され、それは選挙直前まで続く。途中何があってもなりふりかまわず強引につり上げ、選挙直前に高値を付けて利食われる。今回もこのパターンが踏襲されるのであろう。だから順調に行けば、4月22日に付けた17572円、これを抜いてきても不思議ではない。抜いたからと言ったって相場の基調が変わるわけではない。選挙が終わればまた元に戻る。
安倍政権はまず、サミット後に消費税増税の延期それから巨額の財政出動の発表、そして6月16日の日銀の金融政策決定会合においても追加緩和を要請して選挙を乗り切るつもりなのだろう。しかし、たかが日経平均1000円上げるために支払う代償はあまりにも大きい。年金は年次報告書も発表できないほど傷んでいる、郵貯は先に述べたとおり外債だらけ、日銀のETFの含み益は減ってきており出口はまったく見えない、国の借金も膨らむばかりだ。
選挙なんて野党がだらしなければ、与党は何もしなくても勝つのである。支持率10%台の森政権でも選挙は勝つのだから、支持率50%ある安倍政権が負けるわけがないのである。株価を政権維持の道具に使う安倍政権。
安倍首相のサミットにおいての、現在の経済状況がリーマンショック前と同じ状況にあるとの認識には大変驚いた。だから危機を回避するためには政策の総動員が必要なのだという。しかし、毎月毎月いろいろな経済指標が出ているが、どこにそんな危機が存在するのか。そもそもリーマンショックというのは、サブプライムローンという自らの投機の失敗で起こった破綻なのである。いったい誰に吹き込まれてリーマンショックの話を持ち出すのか。
安倍政権は株価しか見ていないようである。8600円から20950円まで上がってもまだ満足できない。強欲はバブルの源泉。そしてバブルは必ずはじけるのである。
最後に、当欄を設けてくれた中西出版の人に、この場を借りてお礼を申し上げます。
5月10日
第5回 ゆっくり進む今回の恐慌
相場がなかなか前に進まない。相変わらず買い支えの動きがみられる。
5月6日米雇用統計が悪い数字だったにもかかわらず、米国株・ドルとも上昇した。4月の日銀政策決定会合前には、日銀が民間金融機関に貸し出す金利をマイナスにするとの報道で相場を吊り上げた。5月3日発表された中国の経済指標も市場予想より悪いものであったが、その日上海総合指数は54ポイント高の大幅高となった。明らかに不自然な動きである。
しかし結局、日銀政策決定会合後、日経平均は高値から2日間で約1600円下げた。上海総合指数も、5月6日、9日の2日間で165ポイント下げた。
相場格言に「登り100日、下げ10日」というのがある。10日間で100日かけて上げた分を帳消しにするという意味である。割高な米国株・ドルともそのうち急落するだろう。
ところで、現在までのところNYダウは史上最高値からほとんど下がっていない。何としてもアメリカ資本主義の象徴であるNYダウは守り抜くという姿勢なのだろう。現在の権力者(オバマでもイエレンでもないだろう)が権力者であり続ける限り、ずっとこんな相場展開が続くのだろうか。もう、まともな投資家は、市場からみんな去ってしまった。
上海総合指数
今回のバブル崩壊のきっかけとなった中国株の暴落は、下降第1波の期間中、世界の株安を先導することになるだろう。したがって中国株のチャートを注視しなければならない。
相場は起点に戻るという性質がある。今回のバブルの出発点2014年3月20日の1993を目指すことになるだろう。最悪の場合は、2008年11月4日に付けた1706に急接近することも考えられる。
そこまで下がってやっと下降第1波が終了である。(本書第8章より)
日経平均株価は2回のバブル崩壊を経て、38915円から7607円まで約8割下落した。だから上海総合指数も2007年10月16日の6092から約8割下落の1200まで下がることになるだろう。
いや、前回の上海総合指数のバブル崩壊相場は、3段下げを伴って
2007年10月16日6092 → 2008年4月18日3094
2008年5月5日3761 → 2008年9月18日1895
2008年9月25日2297 → 2008年11月4日1706 まで下落したが
N値763(6092-3094=2998、3761-2998=763)をまだ達成していない。最悪そこまで下げるだろう。まさかそこまで下げる訳はないと思われるかもしれないが、1929年の世界大恐慌時のNYダウを思い返してほしい。1929年9月3日の381.17から1932年7月8日の41.22まで89.2%下落しているのである。(前著『失われた自由市場』より)
【世界大恐慌時と現在の比較】 | |
1923年9月1日 関東大震災 ↓ 1927年3月15日 昭和金融恐慌 ↓ 1929年9月3日 NYダウ最高値381.17 ↓ 1929年10月24日 世界大恐慌の始まり (暗黒の木曜日) ↓ 1929年11月13日 NYダウ下降第1波終了198.69 ↓ 1932年7月8日 NYダウ41.22(89.2%下落) |
2011年3月11日 東日本大震災 ↓ 2015年6月12日 上海総合指数5166 ↓ 2015年8月11日~13日 世界大恐慌の始まり (人民元切り下げ) ↓ 2016年早ければ9月 上海総合指数1706~1993 ↓ 2019年~20年頃 上海総合指数763を目指す |
4月28日
第4回 相場を弄ぶ者に鉄槌を
4月22日の午前中、日銀が民間金融機関に貸し出す金利をマイナス金利にするとの報道で、17200円台だった日経平均が17500円台まで急伸した。
本来、日銀の政策は4月28日の金融政策決定会合後の黒田総裁の記者会見で明らかになるものである。誰がそんな話を流したのか。政権内部か日銀審議委員かそれとも投機筋か。
もし本当にその通りになれば、それはインサイダーである。逆に話題にも出なければ、それはガセネタつまり風説の流布となる。そうまでして株価をつり上げたいのか。
公的資金筋、投機資金筋に乗っ取られた今の市場に、一般投資家は近づかないほうが賢明である。自由市場は失われたのだ。
日経平均
2016年3月14日17233円から同年4月6日15715円までの下げはチャート上だましとなった。現在の相場は2016年2月12日14952円からの戻りを試している局面である。仮に、戻り高値が4月22日17572円で確定すると、今後は長くて深い3段下げ相場に入る(下図参照、画像クリックで拡大)。
ところで、2015年6月24日20868円から始まったバブル崩壊相場は、一筋縄ではいかない相場である。普通の投資家なら、今まで今回も含めて最低3度チャートのだましにあったはずである。
1度目は2015年8月25日17806円から同年8月28日19136円までの上昇局面
2度目は2016年1月21日16017円から同年2月1日17865円までの上昇局面
そして今回(下図参照、画像クリックで拡大)。
だまされないためにも、エリオット波動で現在の相場がどこにあるのかいつも確認しておくことが大切である。また日経平均が他市場との比較で極端に割安、割高になっていないか確認することもだましに合わない秘訣である(そう言う私も今回はだまされた)。
最後に、九重ケイ線で大天井線といわれる売りサインが4月25日日経平均先物17630円で出たことを紹介しておこう。
当面の下値目標は1.16690円
2.16150円 となる。
ナスダック
2016年4月18日の4960で、2016年2月11日4266からの戻り局面は終わったとみている。今後は3段下げ相場に入ることになる(下図参照、画像クリックで拡大)。
当面の下値目標は1.4884(すでに達成)
2.4795
3.4613 となる。
中国株
上海総合指数は2016年1月28日2655まで下落し、その後4月14日3082まで上昇したが、たかだか427ポイントの上昇である。2015年7月8日3507から2015年7月23日4123までの616ポイントの上昇、2015年8月26日2927から2015年12月22日3651までの724ポイントの上昇に比べれば極端に少ないのである。だからあや戻しなのである。
現在の相場は、2015年12月22日3651から始まった3段下げの最中にある(下図参照、画像クリックで拡大)。ポイントは2015年8月26日に付けた2927である。ここを明確に下回ってくると下げが本格化する。
当面の下値目標は1.2927
2.2655
3.2486(金融緩和の始まった2014年11月21日の終値) となる。
4月20日
第3回 なぜ日本人は天罰が当たっていることに気が付かないのか
被災された方々にはお見舞い申し上げます。
私の言った通りになっただろう。
私は前著『失われた自由市場』をこう書いて結んだ。
「東日本大震災や原発事故は、借金経済や自然破壊への警鐘である。ところが、そんなふうに受け止める人は誰もいなく、以前にも増して日本は、ばらまき経済へと傾斜していった。まもなく、市場からバブル崩壊といった形でしっぺ返しを受けることになるだろう。それでもまだ気が付かないのなら、再び天罰(天災)が下ることになるかもしれない」と。
そして本書第8章の中の「戦争と天災の可能性」の所でもこう書いた。
「人間が自分を律して、この財政赤字問題に真剣に向き合わないのであれば、天罰が下り強制決済となる。天罰は戦争あるいは天災という形ではね返ってくる。過去3度のバブル崩壊の内、2度戦争が絡んでいる。(中略) 2008年5月には中国四川省でマグニチュード7.8(後に8.0に訂正)の大地震が起きている。このようにバブル崩壊というのは、戦争や天災を伴う可能性が非常に高いのだ」と。
この大地震の影響で、消費税増税の目は完全になくなった。財政健全化への道が遠のいたばかりか債券バブル崩壊の日がいっそう早まったのである。
石原慎太郎氏は東日本大震災の時に、飽食に明け暮れている日本人を皮肉ってこう言った。
「我欲を津波で洗い流せ」と。
関東大震災の時には、財界の大御所といわれた渋沢栄一(1840~1931、競馬評論家の故大川慶次郎は曾孫にあたる)が「我が国民は大戦以来いわゆるお調子にのって太平をむさぼってきはしなかったか。これは、天がくだした天譴である」と、警世の言葉をはいた。(『昭和の恐慌』中村政則 小学館より)
勘のいい人、自分たちの足元を客観的に見ることができる人は、こうして反省することができるが、凡人は「天災だからしょうがない」としか思わない。
なぜ九州で初めての大地震が起きたのか。それは東日本大震災後、最初に再稼働した原発が九州だったからではないのか。自然の神様が怒ったのだ。鹿児島の川内原発周辺が震源地でなかったのは、せめてもの神の情けか。
なぜ今起きたのか。安倍総理は4月5日の閣議で、今年度予算の公共事業の前倒しを指示した。このことが神の逆鱗にふれたのであろう。「福島の復興に東京オリンピック、どこにそんな余裕があるのか。株価が下がればすぐ景気対策、いい加減にせえよ」と神様は怒ったのだ。
街頭では募金活動が始まっている。その前にやることがあるだろう。企業は復興法人税を払っていないのである。安倍総理が、自民党執行部が「それは日本人のキズナだから廃止することができない」という全員の反対を押し切ってまで、復興法人税を前倒し廃止したからである。その企業は利益をいっぱいため込んで内部留保している。おかしいだろう。
政府は賃上げせよとか、設備投資せよとか言っているが、国家が企業の経営にまで口出しするのは次元の違う話である。何でも自分の思い通りに進めようとする安倍政権の政権運営は、資本主義でも自由主義経済でも何でもない統制経済そのものである。
世の中の景気が良くなって株価が上がることは、非常にいいことである。しかし、株価をつり上げて景気を良くするっておかしいだろう。同様に、世の中の景気が良くなって物価が上がっていくことは、いいことである。しかし、物価をつり上げて景気を良くするっておかしいだろう。原因と結果が逆なのである。
この需要と供給の法則を無視した期待に働きかけるという現実離れした新しい経済学に私はついていけない。しかし、民衆はこのアベノミクスを支持している。
民衆がアベノミクスに鉄槌を下さないから、神が代わりに天災という形で鉄槌を下したのだ。
私は本書をこう書いて結んだ。
「これからマーケットからの審判が下る。自由市場をゆがめた政府・中央銀行の罪は重い。民衆がアベノミクスを信任しても、自由市場はそれを許さないであろう。人間は自然には勝てないし、政府・中央銀行は自由市場には勝てないのである」
日経平均
理由なき反騰(反抗ではない)である。海外株高に連られて戻しているだけである。だから、基調が変わったなどと思ってはならない。3月14日17233円に対するダブルトップを付けに行くことになるだろう。場合によっては、ザラバ高値17291円を目指すこともあるかもしれない。しかし、そこが限界である。
米国株
米国株の上昇がすさまじい。特にNYダウの。NYダウの日足(ローソク足)を見て、買いから入れる投資家ははたしているのだろうか。おそらく、内部情報を持った人間しか参加していない相場だろう。政府と投機筋とが結託すると、こんな相場になる。チャートにそう書いてある。
目標値が来るまで、ずっとこらえて持っている感じだ。目標値とはいったいいくらなのか。エリオット波動から予測してみよう。
現在相場は、ナスダック(ザラバベース)で、
1段上げ 4209(2月11日)→4576(2月22日) 367ポイント上昇
2段上げ 4425(2月24日)→4746(3月4日) 321ポイント上昇
3段上げ 4607(3月10日)→現在進行中
となっている。
おそらく、1段上げの値幅367を足した4607+367=4974がいい所だろう。
なお、九重ケイ線で大天井線といわれる売りサインが4月4日4911に続いて、また4月19日4968で出た。チャートは大暴落を暗示しているのである。
4月13日
第2回 NY市場もまもなく3段下げへ
日本も欧州も、アメリカに金融緩和を強要させられ(安倍政権は自ら進んでやっている)、ボロボロである。今度は財政政策を強要させられるのであろう。
4月11日の日経平均は15751円。これは、2014年10月31日、日銀が追加緩和する前の日の株価水準である。
一方、4月11日のドイツDAXは9682ポイント。これは、2015年1月22日、ECBが量的緩和を導入する前の日の株価10299ポイントはおろか、2014年6月5日マイナス金利を導入する前の日の株価9926ポイントにも遠く及ばない。
つまり、量的緩和もマイナス金利も、株価に与えた効果は一時的で、結局何の意味もなさなかったということになる。為替にしても、2014年10月31日日銀が追加緩和をする前の水準108円台までドルが下がってしまった。
何のことはない。ただバブルがはじけたというだけのことである。政府、中央銀行が人為的に相場を動かそうということなど、しょせん無理なことなのである。
株バブル崩壊は、2015年8月の中国の人民元切り下げをきっかけにはじまった。
ドルバブル崩壊は、2016年1月の日銀のマイナス金利の導入をきっかけにはじまった。
そしてこれから最後にはじけるのが、債券バブルである。
それが本の帯に書いた「株・ドル・債券の順にバブルは崩壊する」という意味である。
そして、その債券バブル崩壊の引き金を引くのは誰か。
中国、日本と来れば次は…。本書にその予測が書いてある。
日経平均
日本の株価は今、世界に先駆けて下げており、米国株と中国株の暴落待ちのような状態にある。しかしその米国株と中国株はなかなか下がらない。この原稿を書いている4月12日深夜にも「中国が8兆円規模の減税実施へ」というニュースが流れてきた。こうやって世界の為政者達は、相場の先延ばしを図るのである。
前回コラムに書いた当面の下値目標1.16093円は4月5日達成した。
次の下値目標は1.14952円(2016年2月12日終値)
2.14608円(大天井20868の3割下)
3.13910円(2014年4月14日終値)となる。
米国株
前回コラムで、米国株は4月5日が転換点、1両日中に高値を付け下落に転じるだろうと書いた。実際、ナスダックは4月6日4921(ザラバベース)が高値となったが、いまだ高値圏で粘っており、まだこれが天井であるとは言い切れない。しかし、エリオット波動から見ても、一目均衡表のかい離から見ても、もう相場の終わりは近いと思われる。特に九重ケイ線は、大天井線といわれる売りサインが4911で出ており、暴落を示唆している。
もし天井が確定すると、去年からの相場の動きは以下のチャートのようになる(画像クリックで拡大)。
当面の下値目標は1.4593(4266と4920の中値)
2.4266
3.3999(2014年4月11日終値)となる。
4月5日
第1回 3段下げに入る株式相場
拙著「官製バブル崩壊」に興味を持っていただきありがとうございます。
当コラム欄では、最近の経済ニュースを織り交ぜながら、最新の市場分析をします。
今日から10日に1回の割合で、全6~7回を予定しております。
さて本書を脱稿してから1か月半以上がたちましたが、その間株式市場では大きな動きがありました。
2月中旬に株価は大きく売り込まれたものの、日本ではまた年金資金で株を買い、世界では2月末のG20において株価を支えることを決めました。早速アメリカが先陣を切って、ナスダックを3日連続で高値引けに持っていきました。
3月1日 寄り付き4596 高値4689 安値4581 引け4689
3月2日 寄り付き4683 高値4703 安値4665 引け4703
3月3日 寄り付き4698 高値4707 安値4674 引け4707
他国もそれに続き、3月の世界の株価は戻り歩調となりました。よくやるもんだ。
まさしく、本書のはしがきに書いた「今、世界の支配者層、政策立案者たちは、あらゆる限りの力を使って景気(株価)を持ち上げることに必死である」を地で行っている。
しかし、「バブルがひとたび崩壊すれば、政府・中央銀行がどう動こうが、下がるものは下がる。誰も下向きの力を上に向かせることはできない」(第2章より)のである。
日経平均
3月16日FOMCでの利上げ見送りの決定と、3月29日イエレン議長の講演においての利上げペースの鈍化を受けて、翌日世界中の株価が上昇した。
そんな中、日本の株だけが円高を嫌気して下落した。そして4月1日には悪化した日銀短観を受けて、17000前後で推移していた株価がついに下放れた。
これで、2月12日から続いた株価の上昇基調は完全に崩れた。
つまり日経平均先物(ザラバベース)でいうと、
1段上げ 14800(2月12日) → 16340(2月16日、23日)
2段上げ 15730(2月24日) → 17050(3月4日)
3段上げ 16360(3月9日) → 17170(3月14日、15日)
と、3段上げを伴って上昇してきたが、17170が戻り高値となってしまったということである。これから株式相場は、下降第1波の中の3段下げ相場に入るのである。
ここで、去年からの相場の動きをチャートにすると以下のようになる(画像クリックで拡大)。
当面の下値目標は1.16093円(14952と17233の中値)
2.14952円
3.14608円(大天井20868の3割下)となる。
米国株
ナスダック(ザラバベース)は2月11日から、
1段上げ 4209(2月11日) → 4576(2月22日)
2段上げ 4425(2月24日) → 4746(3月4日)
3段上げ 4607(3月10日) → 現在進行中
と、3段上げを伴って現在も上昇中である。しかし1両日中に高値を付け、下落に転じるだろう。
本書ではわかりやすく説明するため、テクニカル分析はエリオット波動しか用いていないが、実際にはいろいろなチャートを参考に総合判断している。
ここに九重ケイ線というチャートがある(前書で紹介した)が、現在のナスダックのチャートは2007年10月の日経平均先物のチャートによく似ている。
2007年の時はサブプライム問題で2007年7月5日18320円から8月17日15230円まで急落、その後FRBの利下げなどを背景に反発し、10月11日には17530円まで上昇した。約74.4%の戻しであった。
今回は、直近2015年12月2日5176から2016年2月11日4209まで急落、その後4月1日現在4917まで上昇した。ここまで約73.2%の戻しである。もうそろそろなのである。
さらに4月5日は変化日である。私の経験上、一目均衡表の重要日柄である9、26、52営業日前にその間の相場の高値安値がぶつかると、相場の転換点になりやすい。
4月5日から数えて9営業日前3月23日のNYダウ17502ドルは直近9日間の安値である。同じく、4月5日から数えて26営業日前2月29日のNYダウ16516ドルは直近26日間の安値に当たる。
だから、4月5日(前後1日くらい)は要注意日なのである。
ドル円
株が上昇しても、ECBが追加緩和をしても、日銀がマイナス金利を導入しても、ドルが上がらない。イエレンが3月29日利上げペースを落とすと言ってるそばから、地区連銀総裁たちが「利上げ、利上げ」と言っている。これは口先介入ではないのか。それでもドルは上がらない。
本書の第5章の所で示したが、ドル円は2014年夏から2015年初めまで、101円処から122円台まで急上昇した。いわば真空地帯をかけ上がっているのである。
現在、相場は111円台ですでに半値押し戻されている。「半値戻しは全値戻し」の相場格言どおり、近い将来101円を目指すことになるだろう。