978-4-89115-306-930年後の住まいを考える会 編著
定価:¥1,800+税
ISBN978-4-89115-306-9 C0082
A5判/119頁/並製
[2014年12月刊行]

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概 要

急速な人口減少により、30年後には3分の1、50年後には約半数の人口になるという北海道。
快適な冬の暮らしをを求め、高気密・高断熱の「北方型住宅」へと結実させた北国の住まいは、変化する社会に対して、次のビジョンをどのように描けばよいのだろうか。

道内在住の建築専門家たちが、北海道の人口や住まいの傾向を分析。
全国で実践されている挑戦的取り組みのケーススタディを通じて、バックキャスティングのアプローチとして30年後の「持続可能な社会」をビジュアルで提案し、 次世代へ向けた価値意識のパラダイムシフトへ挑戦した。
北海道の30年後の「文化としての住まい」を模索し、豊かな生活と住まいのビジョン開拓へ向けた、具体的な議論の種となる一冊。

目 次

第1章 北海道の住まい─変遷
  1-1.北海道の風土と住まいの特性─現状
  1-2.北海道の住宅の変遷─歴史
  1-3.北海道の住まいの到達点と課題
  Column 01.自然とともにある暮らし─かつての住まい方の工夫─

第2章 データ・情勢から見る北海道の住まい─過去・現在・未来
  2-1.北海道の住まいをめぐる状況
  2-2.未来をみつめる方法
  Column 02.世界の人口は爆発─地球規模で人口は増えている─

第3章 これからの住まいのあり方─3つの視点
  3-1.30年後の住まいの姿の骨格と視点
  3-2.ライフスタイル
  ライフスタイルをあらわす住まい─持続可能な生業と暮らしの実現
  Case Study 01 パンづくりから始まる新たな「家族」と「まち並み」:夢工房
  Case Study 02 季節の住まいがある暮らし:グラウンドワーク西神楽による冬期集住・二地域
居住 環境推進モデル事業
  3-3.マネジメント
  熟成する地域─多様な世帯を許容する循環型居住の実現
  Case Study 03 地域にとっての都市公園:UR多摩平の森
  Case Study 04 社会とかかわる一本の鍵:ソーシャルアパートメント中の島
  3-4.ミリュー
  外へ開く住まい―北方型向こう三軒両隣の実現
  Case Study 05 居場所となるお隣さん:地域食堂かえで
  Case Study 06 開くためのマナー:地域共生のいえ
  3-5.住まいのあり方の普遍性─屯田兵村に根付く相互扶助の文化と集落の計画原理

第4章 30年後の住まい─未来の目標像
  4-1.20世紀半ば以後を振り返る
  4-2.30年後の住まい像
  Column 03.エクセルギーという概念─建築環境デザインを豊かに─

資料 シンポジウム開催/参考文献

おわりに
著者プロフィール

本文より

おわりに
 「30年後の住まいを考える会」は、北海道に在住する建築分野の専門家有志の集まりである。メンバーは大学等に所属する研究者と設計事務所等を主宰する実務家で構成されている。
 2011〔平成23〕年4月、北海道を代表する総合研究機関である北海道立総合研究機構・北方建築総合研究所からの委託を受け、日本建築学会北海道支部内に2年間の特別委員会として「北海道の住宅居住水準検討委員会」(以下、居住水準委員会)が設置された。各々で住環境にかかわるさまざまな課題と真摯に向き合い、その解決に取り組んできた本書著者らが、30年後の生活と住まいの提案へ向けて知見や構想を集結させることになる最初のきっかけを得たのは、この居住水準委員会であった。
 著者らは、これから数十年先の未来像を描くという設立趣旨に賛同し、大きな意欲と期待を持って参集した。しかし、意気込んで臨んでみたものの、冒頭からある違和感と疑問に悩み始めることとなった。その理由は、趣旨文で繰り返し用いられていた言葉にあった。「居住水準」と「住様式」である。
 実は、居住水準委員会の立ち上げには歴史的な背景があった。1978〔昭和53〕年3月に、日本建築学会北海道支部から「寒地住宅の規模水準に関する調査研究」[参考文献12の第1部]という報告書(以下、寒地住宅報告書)が出された。寒地住宅報告書は、まず規模水準における地域格差の解決の必要性を謳い、生活時間や生活パターンなどの住生活および平面構成や諸室面積比などの住空間の特徴について本州の温暖な地域(大阪、高知)との差異を示した上で、居住実態調査に基づき性能要求を導き出し、寒地住宅がめざすべき性能水準の提案値を成果としてまとめた。つまり、ここでめざされたのは、北海道の住宅に必要とされる物理的な数値目標の提示であった。居住水準委員会は当初、この寒地住宅報告書の現代版をイメージし、「北海道にふさわしい新たな住様式、住宅像を描き出し、提案すること」を目的として設置されたわけである。
 寒地住宅報告書と居住水準委員会とには30年以上の開きがある。本書で幾度も言及してきた通り、この間に北海道の住宅は目覚ましい発展を遂げてきた。寒地住宅報告書の数値目標は達成されたと言って良い。北海道のまち並みも随分と変貌を遂げた。私たちの住環境はこの30年間で激変した。生活と住まいの状況は30年という時間で全く様変わりする。加えて、これからの30年間は人口減少時代である。前の30年間とはベクトルが全く逆である。上昇志向が含意された「居住水準」という概念はこれからも通用するのか。住宅の断熱性や気密性あるいは床面積規模といった性能は「住様式」と呼ぶべきものなのか。北海道の将来を真剣に考えれば考えるほど、設立趣旨に明記された2つの言葉に対して無批判的ではいられない事態となった。
 2年間の試行錯誤の末の報告書の取りまとめをもって、2013〔平成25〕年3月に居住水準委員会の活動は終了した。一部の委員は、その後も北海道の生活と住まいをテーマとした継続的な議論を望んだ。そして、委員会で得た問題意識を引き継ぐかたちで始動したのが、「30年後の住まいを考える会」である。
 本書では、北海道の30年後の豊かな生活と住まいへ向けてのシナリオをバックキャスティングのアプローチで検討してきた。望まれるあるいは期待される将来目標へ向けて、どのような価値意識が生まれる必要があるのか、あるいは生まれつつあるのか、育まれる必要があるのかというパラダイムシフトへ挑戦した。また、目標像を単に理想的に描くのではなく、先人が積み上げた成果を真摯にレビューし活用するとともに、今日のリアルな現況を客観的かつ実証的に分析することにも注力した。本書の野心的でありながらも実直な考察が、北海道の希望ある未来とその可能性へ向けてのひとつの突破口になることを期待したい。

プロフィール

30年後の住まいを考える会
北海道に在住する建築分野の専門家9名の集まり。
日本建築学会北海道支部内に2011年4月から2年間委託設置された「北海道の住宅居住水準検討委員会」の活動終了後、ここで得た問題意識を引き継ぐかたちで始動。北海道の生活と住まいをテーマとした継続的な議論を行う。
大学等に所属する研究者と設計事務所等を主宰する実務家で構成されている。

上記内容は本書刊行時のものです。