カロートの中 佐藤武 詩集佐藤 武 著
定価:¥1,500+税
ISBN978-4-89115-366-3  C0092
A5判/144頁(並製)
[2019年8月刊行]

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概 要

北海道を代表する画家・佐藤武が、絵画同様に表現を追求する詩をまとめた詩集。
空白の領域から、深い精神的な糧の中から言葉となり生まれてくる作品には、
作家としての真実を探し求める姿勢があらわれている。

目 次

暮れ行く大地 / 陽は沈む / 土に還るとき / 孤独 / 泡沫
死者の呟き / 鈴虫 / 波濤 / 貌に纏わる話 / 蚯蚓の呟き
カロートの中 / 虫けら / 墓石の中 / 終焉 / 添い寝
秋の海原 / 空しい日々 / さだめ / 海 / 愛しき人
故郷 / 語りかける絵 / 絵が腐る / 雪降るころ / 時空を越えるとき
虚無 / 路 / 春 / 東風 / 道 / 死(一) / 死(二)
夕暮れ / 見捨てられた墓 / 老いる / 皺 / 緑陰の果て
蜉蝣 / 冬の日 / 秋日 / 春がやってきた / 蜘蛛の食卓
死者の巡礼 / 生きたや、死にたや / 灰となり / 難破船
暮れ逝く水辺 / 霊園

あとがき
略年譜

本文より

あとがき

詩と絵画はこの宇宙と、自然の空隙から生まれてくる。
そこに存在する空しさは、この宇宙の広がりにある。
音もない真空の中、波紋がどこまでも広がってゆく無窮の世界だ。

絵画は白い空白の領域、無の空間から一つの点を見出す。
凡てはそこから始まり、精神的な糧の中から平面絵画は生まれてくる。
詩も空白の領域から、深い精神的な糧の中から、言葉となり生まれてくる。
描こう、書こうとするものは陳腐なものではなく、空白の無の果てから、新しく生まれてくるものである。
作家は深い精神性と純粋な想像力が絶え間なく必要だ。
最も安全な中を進むのではなく、最も不安定で不確実の中から真実を探し求め、作品が誕生する。
つきることない孤独、つきることない不安、深い暗闇の沈黙の底から作品は未完の形で生まれてくる。時間を捨て、完成へと進むが、絵画も詩も完結することはない。
未完である。
未完であるがゆえに煩悶する。
歓楽からは何一つ生まれてはこない。
(中略)
詩集『カロートの中』のカロートは墓石の地下にある納骨室のことです。誰しも辿り着く場所、死者が眠る場所です。
亦このカロートに入ることなく、大海原で、山の奥地で、密林の中で、死に逝く人、戦争で火葬されることもなく、野に放置され、腐敗し、黄泉の世界に逝く人もいます、そのことが哀憐に想う人もいるかと思いますが、奇麗に焼かれ、納骨室に入ることだけが人の死後の形ではないのです。

死に方は自殺以外選びようがないのですが、死は、どう言った形であれ受け入れなければならない、空しいものなのです。
二〇一九年 春の宵
著者

プロフィール

佐藤武(さとう・たけし)
1947年北海道千歳市生まれ。幼いころより独学にて絵を描き始める。
1965年、国際青年美術家展[日本・アメリカ展]入選。
1987年、第5回上野の森美術館絵画大賞展で箱根彫刻の森美術館賞・特別優秀賞。
同年、第6回東京セントラル美術館油絵大賞展で佳作賞。
2002年、第11回青木繁記念大賞展で優秀賞。
1967年の初個展以後、札幌を中心に毎年個展を開催。そのほか札幌芸術の森美術館での展覧会など、多くの展覧会に出品。
2009年、紺綬褒章を受章した。

上記内容は本書刊行時のものです。