特定非営利活動法人苫東環境コモンズ 編著
定価:¥1,600+税
ISBN978-4-89115-360-1  C0040
A5判/274頁(並製)
[2019年3月刊行]

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概 要

ハスカップは苫小牧の風土を象徴するソウルフード

楚々としたやや洋風な風情で、食べてみると酸味だけでなく驚くほど多様な味。
苫小牧や千歳の勇払原野一帯から北海道各地に広がるハスカップは、
世界の花卉園芸界でも、ポスト・ブルーベリーの位置にあるのです。

苫小牧東部地域(苫東)にあるハスカップの自生地を「コモンズ」(地域が共有するかのような土地)ととらえ、地域住民への聞き取り調査などを含めた実態調査を実施。開拓時代からの暮らしの中での位置づけや、存亡の実態、環境コモンズ研究会のフォーラムでの講演や提言をまとめた、「勇払原野のソウルフード」苫東のハスカップを体系的総合的にとらえた一冊。

目 次

出版にあたって
ハスカップ讃歌
『ハスカップとわたし』の刊行に寄せて

序章 プロローグ鼎談
・座談会 「ソウルフード・ハスカップの新時代」
~なぜ今、ハスカップなのか 多面性と謎に迫る~

第1章 ハスカップの思い出
・聞き取り調査から
・寄稿

第2章 ハスカップの素顔を探る
・ハスカップファーム山口農園をたずねて
~栽培でみつけたハスカップの素顔~
・苫東プロジェクトとハスカップ保全
~ハスカップのサンクチュアリとイニシアチブをめぐって~

第3章 ハスカップのお菓子の歴史
・苫小牧郷土文化研究会主催市民講座講演記録 「よいとまけ」と三星

第4章 ハスカップの世界的な位置
~ハスカップに関する近年の講演録等から~
・ハスカップ新時代に向けて
~勇払原野の風土と資源を持続的に共有するためのイニシアチブ~
基調提言1 「今、世界が注目しているハスカップ」
基調提言2 「ハスカップの保全と苫東」
ディスカッション 「ハスカップ新時代に向けて」
・ハスカップの新たな共有と保全を考える
基調提言1 自然資源の共有をめぐる知恵と苦悩
基調提言2 ハスカップを過去から未来に「つなぐ」ために
報告 ハスカップ・サンクチュアリの現況について

・座談会 ハスカップを語ろう
・北米へのハスカップ導入

第5章 「ハスカップ物語」、その後
・「ハスカップ物語」、その後

あとがきに代えて

本文より

出版にあたって

NPO法人苫東環境コモンズ 代表理事 瀧澤紫織

 ハスカップという漿果樹(しょうかじゅ)は、どこかエキゾチックでさわやかな響きがあり、原野のオリジナルの実は事実、楚々としたやや洋風な風情で、食べてみると酸味だけでなく驚くほど多様な味を持っています。このハスカップが、苫小牧や千歳の勇払原野一帯から全道各地に広がって、北海道どころか世界の花卉(かき)園芸界ではポスト・ブルーベリーの位置にあるというお話を聞いたのが、ほんの数年前でした。
 ハスカップはこれまでもしばしばブームを創っており、近年は「苫小牧特有の食文化」「勇払原野のソウルフード」などと、従来とは違うとらえ方もされるようになり、ついにはハスカップは「苫小牧のアイデンティティだ」と評する人たちも出てきました。
 一方、NPO苫東環境コモンズは平成22年1月にスタートする際に、自由にアクセスできる苫東のハスカップ群生地が、まさに絵にかいたようなコモンズ(地域が共有するかのような土地)だととらえ、土地所有者の了解を得たうえで、苫東内に大きな塊で豊富に散在する「雑木林」とともにハスカップ自生地をコモンズとして保全するための観察と地域利用を謳って進めてきました。
 人気のハスカップはしかし、故事来歴、存亡の実態、またさかのぼって開拓時代の自生の様子や暮らしの中の位置づけなど、体系的総合的にとらえて記述したものはまだありません。ハスカップを栽培し、あるいはそれらを原料に苫小牧らしいお菓子に昇華させ地域ブランドにしてきた歴史の記述もまだ断片的であるように思います。もし土地のアイデンティティたるものならば、これではいけないと始めたのが、開拓時代からハスカップを知る方々やハスカップを愛する地域住民、会社・団体関係者などへの思い出と記憶の聞き取りでした。また、自生する大群落ではしばしば徒長したハスカップが枯れ始めているのを見るにつけ、これは全体植生の中でどうなっているかを調べておく必要があるとわたしたちは考えました。
 このような背景から、過去5、6年ほどの間に続けてきた聞き取りと植生の調査の結果、さらにフォーラムや講演に焦点を当てて拾い上げ、「語り」を「活字」にして編集してみることにしました。北海道開発協会のコモンズフォーラムや苫小牧市美術博物館で行われた公開講座等ですが、たった1回だけのご発言で終わらせてしまうにはもったいない、ハスカップに関する情報満載の話ばかりだったからです。そうしてやっと形になってきたのが本書です。写真に頼らず、市民の思いを活字でとどめる。そこに最大の力点を置きました。その結果とも言えるのですが、各章とも表現の不統一や繰り返しも多々残っております。どうぞ事情をご勘酌いただければ幸いです。
 ハスカップについてせっかく新しい息吹きが漂う今だからこそ、それにふさわしい言葉選びも試してみました。ハスカップを採り食する人たちや愛好者すべてを「ハスカップ市民」と呼んだり、「ハスカップは勇払原野のそばに住む人々のソウルフードだ」という言い回しにたどり着いたり、「ハスカップは食文化」「ハスカップこそ北海道遺産」などがそれです。
 このたびの出版は、開拓時代のハスカップを知る方々をはじめ、たくさんの企業や団体のみなさんにお世話になりました。特に苫小牧郷土文化研究会の山本融定会長と苫小牧市美術博物館の小玉愛子主任学芸員(当時)には、苫小牧の自然史と歴史の位置づけに当たっての議論に加わっていただき、それが基本的なプロローグ鼎談という形になりました。
 また、NPOの設立準備と並行して、コモンズ概念の研究と深化を目的に学識経験者を交えた環境コモンズ研究会(小磯修二座長・釧路公立大学学長・当時)が、北海道開発協会の公益事業として設置され、上記したコモンズフォーラムがハスカップの現地苫小牧で、研究会とわたしたちNPOとの共催で開催されてきました。特に4回目と5回目はテーマとしてハスカップをコモンプール資源としてとらえ、ハスカップに新しい視点が与えられることになりました。
 なお、本出版では、平成25年度の聞き取りおよび現地調査の一部で(一財)前田一歩園財団さんの自然環境保全活動に対する助成をいただきました。同じく平成25年はコカ・コーラさんの「い・ろ・は・す」“地元の水”応援プロジェクトのご支援で、ハスカップ保全と復元の検討作業を行い、ハスカップフォーラムを開催しました。これらの助成がなければ、この出版にたどり着くことは難しかったと思います。
この本を上梓するにあたって、これまで様々なステージでご協力を賜ったすべての方々に心よりお礼申し上げる次第です。
 最後にもうひとつお伝えしておきたいことがあります。それは、この出版の経費が、これまで雑木林の保育間伐で出てきた丸太を薪(「雑木薪(ぞうきまき)」と呼びます)に裁断して、会員が自賄いした残りを友人知人らに引き取ってもらったお礼代の貯金がもとになっていることです。つまり、会員の冬場の間伐作業のおかげなのです。しかも間伐作業の資機材はコープさっぽろさんの「未来の森づくり基金」(平成25~27年)の助成に助けられました。発刊にあたって、この「雑木薪」生産に携わってきてくれた会員すべてにねぎらいの言葉を贈りますとともに、資金源の「雑木薪」生産を支えてくれたコープさっぽろさんにあらためてお礼を申し上げたいと思います。

プロフィール

特定非営利活動法人 苫東環境コモンズ
2010年発足。苫東の一部にある区域を想定し、所有者の了解のもとで豊かな自然を守りながら利用させてもらう「環境コモンズ」の中心となって、現況緑地の保全と利活用を具体的に推進する団体。
「環境コモンズ」とは、明確な私的土地所有の枠組みの中で、かつ、所有者の許容する範囲内で、地域住民が「環境の享受(利用)」を行い、その引き替えに利用管理・情報発信の一部に協力する相互関係の仕組みのこと。

上記内容は本書刊行時のものです。