佐藤 武 著
定価:¥1,500+税
ISBN978-4-89115-331-1 C0095
四六判/194頁/上製
[2016年11月刊行]
概 要
画家・佐藤武の原点がここにある。
若き日の追想と詩作で綴る、作家の原風景。
北海道を代表する画家・佐藤武が、自らの絵画世界の原点となった幼年期から青年期までをエッセイとして綴った。
生まれ育った千歳の日々、画家を目指し絵を描き続けた札幌や東京での個性豊かな芸術家たちとの出逢いなど、北海道の若き画家が駆け抜けた時代を追想する。
絵画とともに創作を続けてきた詩作13編と油彩作品5点も収録。
目 次
幼き頃を回想
少年期
青年期
あとがき
[詩]
骨
皺
墓穴
暮れゆく大地
旅の終わり
まきストーブ
虚無
夕暮れの恋心
夏の鳥沼
旅の終わり「雪降る頃」
不安な情景
死するとき
秋の朝[ぶらぶら日誌 Ⅲ]
略年譜
本文より
思うに、実に二十二才になろうとしている青年がいろいろな人と出会い、全くの他人からここまで愛されている自分がいる。
これらの出会いと人を愛することが今の絵に大きくかかわりをもっていく。
ぼくの絵画はこの若き頃の人生が大きく左右している。
若き頃、孤独と寂しさの狭間でもがき苦しみ抜いた青春時代が現在描いている「旅の終わり」シリーズの絵画へと結びついている。
すでに旅は終わりに近づいている。この先どこで終わるかはぼくの知るところではないが、確実に近づいていることは確かである。
今その終わりである終焉に向かい、重い足を引きずりその場所へ一歩一歩、歩いているのである。
終焉の世界が暗く怖いものとは思わない。なぜなら誰しもが、必ずたどり着く道程だからである。 今回のエッセイ「時空を駆ける青春」は、幼き頃から青年期までを回想したものである。
幼き頃に描き始めた油彩画、思い返せば六十年余り絵と向かい合ってきた。
ほぼ独学にて描き続けてきたぼくの絵画世界、ふと気が付けば七十才を迎えようとしている。
絵画はぼくにとってぼくの凡てです。絵が描けなくなる時がぼくの死である。
絵を描き、詩を書き生きている自分に一時の幸福感を覚えるものである。
今自分が生き、絵を描き一日一日生きていけるこの環境がぼくの身の丈に合った生き方なのである。漂う大気の中で
やがて灰となり
白き雲となり
碧く高き空の彼方へと
あてのない旅路にとつきます。 ぼくの内なるものは描きためた絵画、書き記した詩がある。
これらのものがこの大地にいつまでも残り人の目に触れることがぼくの生きた証にもなるわけである。
いま老いゆくとき決して、これ以上のものを求めようとするものではない。
人には身の丈に合った生き方が必要なのである。多くを望まずただ只管絵を描き旅立つことが、たった一つの望みである。 平成二十八年六月十八日
プロフィール
佐藤武(さとう・たけし)
1947年北海道千歳市生まれ。11歳頃から独学で油絵を始める。
1965年、国際青年美術家展[日本・アメリカ展]入選。
1987年、第5回上野の森美術館絵画大賞展で彫刻の森美術館賞・特別優秀賞。
1991年、第4回時計台文化会館美術大賞展で国松登賞。
同年、第6回東京セントラル美術館油絵大賞展で佳作賞。
2002年、第11回青木繁記念大賞展で優秀賞。
また、1967年の初個展以後、札幌を中心に毎年個展を開催している。
そのほか、札幌芸術の森美術館での「見えるもの←→見えないもの」(2006年)、札幌芸術の森美術館コレクション選「佐藤武展―停止する追想―」、札幌美術展「パラレルワールド冒険譚」(2011年)、目で楽しむ音楽展(2015年)など、多くの展覧会に出品。
2009年、紺綬褒章を受章した。
上記内容は本書刊行時のものです。