北海道の海辺を歩く鈴木 明彦 著
定価:¥1,200+税
ISBN978-4-89115-330-4  C0040
四六/119頁/並製
[2016年10月刊行]

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概 要

「ビーチコーミングって何?」
ビーチコーミングとは浜辺に落ちている漂着物を拾い集める知的な遊びのことです。
ビーチコーミングの「コーム」というのは、髪の毛をとくのに使う櫛、「コーム(comb)」が語源だそうです。浜辺を手の櫛でとくようにして漂着物を拾う事から、「ビーチコーミング」と名付けられました。
ビーチコーミングに特別なルールはありません。人それぞれ、いろいろな遊び方、楽しみ方があります。
自分流のスタイルで、気軽に始めてみましょう。きっと海の自然や文化について、たくさん学ぶ事ができますよ。

目 次

まえがき

第1章 ビーチコーミング学への誘い
1.漂着物とは
2.ビーチコーミングとは
3.ビーチコーミングと海岸地形
4.科学としてのビーチコーミング
5.ビーチコーミングに出かけよう
BCコラム1.海上の道

第2章 漂着物の自然史
1.軟体動物(貝類)
2.棘皮動物
3.節足動物・甲殻類
4.様々な無脊椎動物
5.海生哺乳類
6.様々な脊椎動物
7.海藻
8.果実・種子
9.鉱物・岩石
10.化石
BCコラム2.オウムガイ

第3章 漂着物の文化史
1.ガラス浮き
2.色々な浮き
3.漁業用具
4.おもちゃ
5.危険な漂着物
6.外国からの漂着物
BCコラム3.ベントス浮き

第4章 自然史学的アプローチ
1.暖流系漂着物の意義
2.アオイガイの生態を探る
3.打ち上げ貝の海洋生物地理
4.南方系の漂着果実・種子
5.鳴き砂の特徴との起源
BCコラム4.カプリ島

第5章 アウトリーチ活動
1.「海辺の宝さがし」(2001~2005)
2.「とましんビーチコーミング」(2008~)
3.「化石と漂着物から読む自然誌」(2008~)
4.リーフレットからハンドブックへ
5.博物館における漂着物展示
BCコラム5.ドーヴァー海岸

第6章 ビーチコーミング学の展望と課題
1.漂着物の多様性
2.学際科学としてのビーチコーミング学
3.シームレスなビーチコーミング学へ
BCコラム6.漂着物学会

参考文献
あとがき

本文より

まえがき
 どうして人はこんなにも海辺に魅きつけられるのでしょうか。人は海辺に立つと、心が洗われ、波音に安らぎを覚え、しだいに自分が癒されていることに気づきます。遥かな昔から、人は海辺を歩き、そこでひとしきり考え、さらにはまだ見ぬ遠い世界に憧れを抱いたのでしょう。海辺とは、私たちにとってどのような場所なのか、人間だけでなくあらゆる生物にとっても、どのような場所なのかを考えてみるのは大切なことです。
 『ウォールデン―森の生活』(1854年)で知られる十九世紀アメリカの作家・詩人・ナチュラリストのヘンリー・デイビッド・ソローは、海を対象とした自然文学の傑作『コッド岬』(1865年)において、「海辺は一種の中立地帯であり、この世界について深く考えるにはもっとも都合のよい場所だ」と語っています。
 海辺は海と陸とが直接出会う場所です。そこは海と陸というまったく異なる生態系の境界に位置し、海から陸へと次第に環境が変化する緩衝地帯(エコトーン)といえます。そのため、海辺は海と陸との両方から様々な影響を受けやすい繊細な場所なのです。
 海に行く機会があったら、ぜひとも自分の足で、海辺を歩いてみて下さい。たとえば砂浜を歩いてみれば、普段何気なく眺めている波打ち際にも、色々なものが打ち上げられていることに気づくでしょう。貝殻や小石、ボールやビーチグラス、流木やクルミなど、今までゴミだと思っていたものの中に意外なものが紛れこんでいたりするものです。ひととき砂浜にしゃがみこんで、海からの贈り物である渚の漂着物を探してみませんか。 北海道は、日本海、太平洋、オホーツク海という異なる性質をもった3つの海に取り囲まれています。また、北海道の海は、2つの海流の影響を強く受けています。ひとつは、南方で黒潮から分岐して対馬海峡を経由し、日本海を北上する対馬暖流です。もうひとつは、ベーリング海から千島列島を南下して、北海道東部にやってくる親潮です。このような理由で、北海道沿岸は、暖流・寒流それぞれに由来する多種多様な漂着物が見られるのです。
 本書では、従来は主に趣味や野外遊びとして扱われていた漂着物探しやビーチコーミングを、科学の視点から見直すことを考えました。そしてこのような〈知的ビーチコーミング〉に関する方法や知識を、「ビーチコーミング学」として再定義してみました。〈拾って、集めて、考える〉というビーチコーミング本来の楽しみを、北海道の漂着物を中心として紹介することにしました。北の海辺ではユニークな漂着物があなたを待っています。

プロフィール

鈴木明彦(すずき・あきひこ)
北海道教育大学札幌校教授。理学博士。専門は地質学・古生物学。
北海道大学大学院理学研究科地質学鉱物学専攻博士課程修了。
漂着物学会編集委員長(2010年~)。
1996年ロシア科学アカデミー海洋生物学研究所(ウラジオストク)留学。
1999年北海道大学水産学部海洋生物学講座(函館)国内留学。
主要著書に『北海道の漂着物―ビーチコーミングガイド』(道新マイブック)、『北海道ビーチコーマーズガイド』(共著、北海道海岸生物研究会)、『漂着物考―浜辺のミュージアム』(共著、INAX出版)、『札幌の自然を歩く―道央地域の地質あんない』(共著、北海道大学出版会)。
若宮明彦の筆名で、詩作を続ける。詩集『掌の中の小石』、『貝殻幻想』、『海のエスキス』、詩論集『北方抒情』、アンソロジー『海の詩集』など。北海道詩人協会賞(1998年)、札幌文化奨励賞(2012年)受賞。北海道詩人協会会長(2016年~)。

上記内容は本書刊行時のものです。