小磯 修二、関口 麻奈美 著
定価:¥1,500+税
ISBN978-4-89115-315-1 C0052
四六判/235頁/並製
[2015年10月刊行]

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概 要

土木・道路工事や非常の災害対応、雪国では公道の除排雪と、住民生活の基盤を支える役割を担う地域の建設業。
公共投資の減少や人手不足など社会情勢が著しく変化する時代に、北海道でその土地の歴史とともに歩んできた建設業ならではの発想で生き抜く企業を丹念に取材。現場の目線から生まれた「地域産業としての建設業」の実践事例を紹介する。
同業者減少に対応した緊急時対応のネットワークづくり、ITC技術を生かした情報化、地域密着の姿勢から生まれた食品産業への進出や新技術の開発など、北海道を舞台に活動を続ける建設業を「地域づくり」の視点で捉えた一冊。

2014年8月発行の『地域とともに生きる 建設業』第2弾。

目 次

はじめに

第1章 いのちと暮らしを守る
身近な土木施設、道路/地吹雪の中での除雪作業/通行車両・歩行者に留意しながら進める大都市部の除排雪作業/粉じんで真っ黒になった時代も/ネットワーク化で地域を越えた災害対応ヘ
コラム 地方の眼―1 「事業仕分け」の限界

第2章 個のやる気を引き出す
石炭事業の歴史と革新的経営/社長交代で社員を活かす企業経営に/CCPMの導入で公共事業の三方よしを実現/これからの人材育成のかぎ、情報化施工/地域の財産としての企業価値
コラム 地方の眼―2 ソーシャルキャピタル

第3章 食料生産を支える
漁業と酪農のまち、標津町/地域密着が不可欠の農業土木/地域の基幹産業との連携が強化/地域に広がる、連携力
コラム 地方の眼―3 土地を変える技術

第4章 小さなまちから世界へ
インフラの老朽化にビジネスの芽/「維持更新の時代がやってくる」という先見の明/簡単操作でコンクリートの強度を診断/クボ・ハンマー、雄武から世界へ/意外な分野で市場の広がりを期待/メイド・イン・オウムを日本、世界ヘ
コラム 地方の眼―4 インフラクライシス

第5章 目の前にある小さなニーズをビジネスに
公共事業の削減から新分野に進出/「地域に必要とされる企業」に/再生クラッシャーラン製造工の開発/IT活用で外から資金を稼ぐ
コラム 地方の眼―5 ブルー・オーシャン

第6章 技術を生かして海外へ進出
人材力を高め、組織の活力を維持する海外展開/北海道開発と縁の深いキルギスへ進出/寒冷地の建築技術を生かして
コラム 地方の眼―6 ODAによる海外展開

第7章 “公”の役割を担う
地域の豊かな自然環境を次代へ/トラスト活動の経験を活かして/農業分野へも進出/地域への奉仕の理念/指定管理者・PFI制度を積極的に/空港管理の先進事例が旭川に
コラム 地方の眼―7 コンセッション

第8章 地域資源を発掘し、まちを元気に
地域に根差したまちづくり活動/キリンクレーンで建設業を身近に/まちの歴史に地域資源あり/地域の課題に向き合って信頼される企業ヘ
コラム 地方の眼―8 新幹線開業

第9章 地域内連携への挑戦
建設業の連携力が試される時代/市町村合併を経て、大空建設業協会を設立/大空総合管理協同組合の誕生/念願の指定管理者に/提案型で地域の活性化とともに業務の幅を広げる/地域振興を目的に建設業者らが会社を設立/「エミュー」を音別の新しい名物に/地域に向き合う建設業/「魚道」をテーマに強まる連携
コラム 地方の眼―9 平成の市町村合併

第10章 地域エネルギーの活用
エネルギー問題と向き合う/環境問題に向き合う中で/北海道の地域特性から生まれた架台/時代の流れを見極める/スマートコミュニティでエネルギーと資金の域内循環を/電力ビジネスを地域振興に
コラム 地方の眼―10 エネルギーの地産地消

第11章 次世代につなぐ人づくり
大きな課題となっている人材不足、後継者不足/地域密着で末永く顧客とつながる/自社の大工は北海道・大工養成塾で育成/建設業を身近に感じてもらうきっかけづくり
コラム 地方の眼―11 無名碑

第12章 地域経済を牽引する
地域経済を元気にするリーダー役として/地域密着型経営で存在感を示す/富良野の一大「食」空間、フラノマルシェ/観光産業と中心市街地活性化
コラム 地方の眼―12 観光産業は都市産業

第13章 地域の伝統的な資源を生かす
高付加価値の新しい地場産業を生み出す/産業大麻に着目し、新たな展開へ/地域の伝統に着目し、復活させた「勇知いも」/低温貯蔵で食味を向上
コラム 地方の眼―13 地域資源、伝統へのこだわり

第14章 ワインづくりで雇用を守る
北海道南西沖地震と建設業/雇用を守るために考えたワインづくり/台風の被害を乗り越えて/雇用を維持するために企業再建にも尽力/離島のハンディを観光産業の魅力づくりに
コラム 地方の眼―14 ストーリー性

おわりに

本文より

はじめに
 本書は、二〇一四年八月に発刊した『地域とともに生きる 建設業』の第二巻として発刊するものです。第一巻では、地域社会を支えている建設業の姿について、主に産業としての視点から、地域をめぐる課題にも触れながら建設業の実態について分析を試みました。
 第一巻を発刊してから、多くの方々から感想をいただきました。地元の建設業の方々からは、あらためて産業としての建設業の特性や課題などを理解することができたという声や、これまでややもすれば誤解の多かった建設業について、その役割も含めて冷静に体系的な理解ができたという感想をもらいました。実際の建設業の姿を伝えようとした姿勢に対して感謝の声が実に多く寄せられました。日々現場で責任と誇りを持って仕事に励んでおられる建設業の皆さんの気持ちを少しでも伝えることができればという思いで執筆しただけに、それが伝わったことにホッとするとともに、正直感激しました。
 また、地域の活性化に関わる仕事をしたいと言っていた学生から、この本を読んで将来の仕事として建設業を選択肢に入れたという報告がありました。さらに、研究者の仲間からは、やはり東京の大手ゼネコンと地方の業者をひとくくりで建設業として見ることには無理があるというコメントがありました。公共事業に関わる中央行政の経験者からは、建設行政については、産業として発展させていく産業政策の視点が弱かったのではないかと感じているという率直な声も寄せられました。地域の立場で建設業の姿を発信していくことの大切さとともに、責任の重さをあらためて実感しています。
 第一巻の執筆に当たっては、建設業の実態をこの目で確認するとともに、各地の現場で仕事をしておられる多くの建設業の方々からお話をおうかがいするために、北海道内各地を回ってきました。本書は『地域とともに生きる 建設業』の第二巻として、そこで見てきた実践的に活動をしておられる建設業の皆さんの具体的な取り組みを紹介するものです。厳冬期における除排雪作業への同行体験や、小学生を相手に仕事の内容を分かりやすく説明するのに奮闘している建設業の皆さんの姿など、楽しくも現場の厳しさを感じる取材でした。将来への可能性を感じる活動も多くあり、他の建設業の方々にも是非参考にしていただければという気持ちで紹介しています。しかし、取材させていただいた全ての取り組みを紹介することができないことをお詫びいたします。やはり、建設業の魅力は現場にあると思います。その一端でも感じていただければ幸いです。
 本書は、わたしと関口麻奈美の二人で調査、取材したものをまとめたものです。コラムについては、それぞれの章で紹介した内容に関連したテーマで、地方の眼としてわたしの感想を書きつづったもので、ご笑覧いただければ幸いです。
 取材では本当に多くの方々にご協力をいただき、心より感謝しております。全ての方々のお名前を記すことができないことを重ねてお詫びいたします。また、第一巻に引き続き、本取材調査の機会を作っていただいた岩田圭剛会長、中山茂総合企画委員長はじめ一般社団法人北海道建設業協会の皆さまには心よりお礼を申し上げます。北海道建設新聞社の矢部育夫さんには、取材調査に当たって適切なアドバイスをいただき感謝しております。最後に、出版、編集でご協力をいただいた中西出版(株)河西博嗣さん、山本広嗣さんには大変お世話になりました。心よりお礼を申し上げます。

小磯 修二

プロフィール

小磯修二(こいそ・しゅうじ)
北海道大学公共政策大学院特任教授
1948年大阪市生まれ。京都大学法学部卒業。北海道開発庁(現国土交通省)等を経て、99年に釧路公立大学教授、地域経済研究センター長。2008年同学長を務め、12年から現職。専門は、地域開発政策、地域経済。実践的な地域課題解決を目指す研究スタイルで、これまで多くの研究プロジェクトを組織。中央アジア等での経済協力活動にも従事。
著書は『地域自立の産業政策』(イマジン出版)、『地方が輝くために』(柏艪舎)、『地域とともに生きる建設業』(中西出版)など。

関口麻奈美(せきぐち・まなみ)
フリーライター
北海道苫前町生まれ。天使女子短期大学卒業。編集プロダクション会社勤務を経て、1999年に独立。マーケティング調査や編集業務に携わりながら地域研究活動にも従事。釧路公立大学客員研究員として商店街活性化、観光経済調査などの研究プロジェクトに参画。99年から発行されている『開発こうほう』地域経済レポート特集号『マルシェノルド』(一般財団法人北海道開発協会発行)の編集、取材に創刊から携わる。
著書は『コモンズ 地域の再生と創造』(共著、北海道大学出版会)など。

上記内容は本書刊行時のものです。