4-89115-145-5STVラジオ
定価:¥1,200+税

ISBN4-89115-145-5  C0021
四六判/442頁/並製
[2005年11月刊行]

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概 要

<北の大地、北海道で繰り広げられた先人たちの壮絶な人間ドラマ「ほっかいどう百年物語」シリーズ、第6弾。情熱的な恋愛遍歴を重ねた国民的女流作家宇野千代、昭和を代表する時代小説家子母澤寛、松尾ジンギスカンの創業者松尾政治、樋口一葉受賞作家辻村もと子ら33人の物語。

目 次

宇野千代(うのちよ)/情熱的な恋愛遍歴を重ねた国民的女流作家
渡辺良作(わたなべりょうさく)/北海道の大地に砂金掘りの夢を託した男
田上義也(たのうえよしや)/北方建築の基礎を創った情熱の建築家
続 豊治(つづきとよじ)/日本人で初めて西洋船を造った船大工
福士成豊(ふくしなりとよ)/日本人で初めて気象観測所を函館に開く
子母澤寛(しもざわかん)/厚田村出身の昭和を代表する時代小説家
本間一夫(ほんまかずお)/増毛町出身・日本点字図書館の発展に寄与した
島本 融(しまもととおる)/北海道銀行の創設者
田辺三重松(たなべみえまつ)/函館出身の北海道を描いた洋画家
紀藤義一(きとうぎいち)/ウトナイ湖周辺の野鳥保護運動の推進者
中川五郎治(なかがわごろうじ)/日本で初の牛痘法による予防接種を成功させた
宇都宮仙太郎(うつのみやせんたろう)/日本酪農の父
島木健作(しまきけんさく)/札幌出身のプロレタリア作家
澤 茂吉(さわしげきち)/サラブレット王国・日高の基礎を築いた
松尾政治(まつおまさじ)/松尾ジンギスカンの創業者
島本虎三(しまもととらぞう)/国会議員から仁木町長となり町おこしに尽力した
伴 素彦(ばんもとひこ)/冬季オリンピック・日本初のジャンパー
中村信以(なかむらしんい)/富貴堂の創業者
永久保秀二郎(ながくぼしゅうじろう)/アイヌ教育に生涯を捧げた教育者
柴崎重行(しばざきしげゆき)/野にある無冠の芸術家
朝日 昇(あさひのぼる)/馬産王国・豆王国十勝の基礎を築いた
内田正練(うちだまさよし)/日本人初のオリンピック水泳選手
浅原久吉(あさはらひさきち)/「北一硝子」の創業者
上野茂樹(うえのしげき)/観光地・知床の発展に寄与した知床第一ホテル創業者
辻村もと子(つじむらもとこ)/岩見沢出身の樋口一葉賞受賞作家
佐藤在寛(さとうざいかん)/北海道盲聾唖教育の父
稲田家静内入植物語/淡路島から入植し静内町の基礎を築いた
滝本金蔵(たきもときんぞう)/登別温泉湯守として名湯を世に広めた
神八三郎(じんはちさぶろう)/「日本釧路種」を作った馬の神様
渋谷吉尾(しぶやよしお)/かんじきソフトボールの考案者
網走流氷観光砕氷船「おーろら」物語/ふるさと企業大賞受賞
山田範三郎(やまだはんざぶろう)/日本育児園分院農園「北星園」の設立者
素木しづ(しらきしづ)/「樋口一葉の再来」といわれた片足の女流作家

本文より

宇野千代(うのちよ)
1897~1996

 野間文芸賞、女流文学賞などを受賞し、大正・昭和・平成を生きた女流作家・宇野千代。「おはん」に代表される彼女の作品は、千代自身の実生活を題材にしたものがほとんどで、宇野千代が私小説作家と呼ばれる所以(ゆえん)となっています。情熱的な恋愛遍歴ばかりが強調されがちな宇野千代の、作家人生の出発点ともなった札幌での生活と、その知られざる横顔をご紹介します。

 大正9年9月上旬。秋風の吹き始めたすがすがしい札幌駅に、23歳の宇野千代は降り立ちました。駅前から南北に延びる停車場通り。2年前に行われた「祝開道50年」を祝う北海道博覧会のポスターが、まるで千代の来道を祝っているかのようです。真っ直ぐに続くアカシア並木の両側には、真新しい洋風建築が建ち並んでいました。
「こんなに、美しく整備された町だなんて。何だか、夢を見ているようだわ」
 夫である藤村忠が拓殖銀行に就職し、新生活に期待をふくらませての北海道。人口10万人を超える町へと発展しつつある札幌は、千代にとってまさに新たなる人生の第一歩です。
「今までの嫌なことはみな忘れ、この町で出直そう…」
 女の目に映る札幌の第一印象は、そんな千代の心に夢を与えるに相応(ふさわ)しい町並みが広がっていたのです。明治30年11月28日。宇野千代は、父・俊次と母・トモの長女として、現在の山口県岩国市に生まれました。当時の岩国は、関ヶ原の戦い以降、明治維新までの長きに渡って、岩国藩として栄えた由緒(ゆいしょ)ある城下町。学問や武芸を重んじ、子弟に対する教育が高く、その気風は明治に入ってもなお受け継がれる町でもありました。千代の実家である宇野家も戦国時代から続く家系でしたが、気位ばかり高く働くことを嫌った父・俊次は、生涯定職にも就かず、本家からの仕送りを目当てに競走馬の馬主となっては、自由奔放に生きる遊び人でした。父がいながら働き手のない宇野家の生活は貧しさを極め、小学校に上がった千代は修学旅行にも行けず、冬にはわら草履(ぞうり)を手に持って通わされる有様でした。
「裸足は濡れても腐らんが、草履は濡れると腐るけえの…もったいないでよ」
 理不尽とも思えるほど勝手な父。それが俊次流のスパルタ教育でもあったのです。女は黙って男に従い、静かに耐えることを美徳とした時代です。声を立てて笑うことも、友達とも自由に遊べない…。千代は貧しい上に「かごの鳥」のような生活を送るのでした。
「おかさぁがじーっと我慢しとりますけえ、私だけわがままは言えんでよう」
奔放で独創的な父と、忍耐一途(いちず)な母。この対極的な両親との間にあって、千代の思春期は過ぎていったのです。…………… (本文より)

プロフィール

STVラジオ制作スタッフ
ナレーター   三上 勝由、岡田 雅夫、工藤 みき、藤原 俊和、奈良 愛美
構成作家    佐々木信恵
ディレクター  永井 茂夫
プロデューサー 坪内 弘樹

上記内容は本書刊行時のものです。