4-89115-151-X若林 滋 著
定価:¥1,800+税
ISBN4-89115-151-X  C0021
四六判/372頁/並製
[2006年8月刊行]

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概 要

明治の父母たちは食べ物を節約し、労務を提供して学校を作り維持した。屯田兵村や開拓地で子どもは貧しくとも家庭と地域の愛に育まれ、教師に導かれて成長する。豊かな愛と土に親しむ教育が生命を尊ぶ心を涵養した。今失われているものがそこにあった。北海道教育の源流をたどって教育の初心を思い出し、現代教育の課題と向き合い、農業の役割を見直したい。本書にその手掛かりがある。

目 次

発刊に寄せて
はじめに
第一部 屯田学校
第一章 開拓教育の先駆け

第二章 防衛優先、立地無視の屯田
第三章 空知教育の風雪
第四章 米どころの開拓教育
第五章 北方に構える

第二部 北海道の初等教育の歩み
一 開拓使以前の教育
二 開拓使の教育政策
三 三県の教育政策
四 道庁の教育政策
五 戦時下の北海道教育

北海道教育史略年表
あとがき

本文より

はじめに
 「邑(むら)に不学の戸なく家に不学の人なからしめん」
と「学制」が発布された明治五年(一八七二)は遙に遠く、教育基本法が制定された昭和二十二年(一九四七)からでもおよそ六十年、還暦を迎えた戦後教育について考えました。
 昭和一桁最後(九年)に道北の農村で生まれ、国民学校では軍国主義教育、戦後にわかに小学校に変わって教科書に墨を塗り、いわゆる民主教育を受け、その変化にどう折り合いをつけるか、幼いなりに心を惑わせた記憶がよみがえります。
 そして今、学級崩壊、学力低下、ニートの増加、自己中心の拝金主義、少子化といった教育をめぐる多くの問題が浮上しています。もっとも気になるのは、親が子どもを、子どもが親を殺そうとするなど子ども社会に現れた、命の軽視の問題です。これは基本法改正で論議となった愛国心の欠如にも増して重大ではないか、と思われます。
 基本法にいう「個人の尊厳」は、命の尊厳とも理解できますが、それがないがしろにされています。全国画一的な教育で地域と生活が無視され、職業の誇りが奪われた、とも指摘されます。格差社会の中で、所得の格差が教育機会の格差を生んでいます。
 文部科学省の学習指導要領や「生命を尊ぶ心を育てる指導」に任せておけば済むのでしょうか。政治や経済、社会の体制もさることながら、地域社会、学校、家庭といった身の回りの教育環境にまず目を向け市民として、親として何ができるかを考えてみなければならないと思うのです。
 そこで北海道という歴史の浅い地方の教育がどのように始まり、どう歩んできたかを振り返ってみるのも意味のあることと思います。入植と同時に小学校を設け、子弟を教育した屯田兵村や入植地の「開拓教育」は、北海道教育の源流ともいえます。開拓と子弟教育を両立させる工夫、父母や地域の子どもの教育に対する熱い思い。そこには貧しくとも肌の温もりがありました。学校では農業教育が重視されました。北海道農業は後継者不在、国際化など様々な問題を抱えています。また、命を尊ぶ心の涵養や環境問題と農業のかかわりにも目を向ける必要があります。今、屯田学校・開拓教育を取り上げる理由です。
 この小著からなにかを読み取っていただければ、と願っています。
 ご一読、ご批判をお願い申し上げます。(「はじめに」より)

プロフィール

若林 滋(わかばやし しげる)
1934年北海道生まれ。士別高校、東北大卒。読売新聞記者、関連会社役員を経て現在、北海道屯田兵制度研究会代表、北海道屯田倶楽部理事、北海道史研究協議会会員。

上記内容は本書刊行時のものです。