978-4-89115-177-5若林 滋 著
定価:¥2,095+税
ISBN978-4-89115-177-5  C0093
A5判/512頁/並製
[2008年7月刊行]

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概 要

薩長権力への痛烈な告発。
三沢毅の生きざまを根幹に据え、幕府崩壊の顛末と戊辰戦争の勃発、あるいは薩長藩閥主導の明治政府、薩閥開拓使、開拓使官有物払い下げなど詳細な資料をもとに語られている。この本は、北海道開拓裏面史でもある。北海道の開拓初期に関心を寄せる方に一読をお勧めしたい。(作家 田中和夫)

目 次

発刊によせて 田中和夫
第一章 移住船北へ
第二章 琴似入村
第三章 文をもって立て
第四章 西南の嵐
第五章 清隆に妻殺し疑惑
第六章 札幌本庁炎上
第七章 弁慶走る
第八章 十勝からきた悪魔
第九章 開拓使崩壊
第十章 民衆の怒り
第十一章 道庁と囚人労働
第十二章 藩閥の軛(くびき)
第十三章 中隊長襲撃される
第十四章 会津武士三沢毅逝く
終 章 奪われる大地 「屯田兵の枠を超えた読み物」 小林博明
おわりに 参考史料、文献

本文より

 昔、初めて札幌まつりの神輿渡御の行列を見て、おやっと思ったことがある。先導役の維新勤皇隊が戊辰戦争映画の西軍東上に似ていたからだ。
 札幌神社の創基は開拓使が設置された、明治二年(一八六九)九月一日である。明治天皇が東久世開拓使長官に大国魂神など開拓三神を祀らせた日だ。その御霊代(みたましろ)を背負って来たのがあの開拓判官島義勇で、開拓使は北海道総鎮守として円山に三神を祀る社を造営する。六月十五日を例祭と定め、仕事を休み国旗を掲揚するよう通達した。黒田長官も勅使として参拝している。札幌まつりに維新勤皇隊が登場するのはずっと後のことだが、神社の成り立ちからすれば勤皇隊が威勢を誇っても不思議ではない。
 が、遙かな時代からこの地を故郷としてきた先住の人々、朝敵として戊辰戦争に敗れ、逃れてきた諸藩士たちには征服者の進撃に見えたのではないか、と考えたものだ。札幌神社は北海道神宮となり、維新勤皇隊は長く市民に親しまれてきた。
 下って平成六年(一九九四)五月、札幌の琴似神社に会津藩祖保科正之の霊神が合祀された。西軍に降伏し藩廃絶の処分を受けた旧会津藩士たちが青森県下北の開拓に失敗、琴似に屯田入植してから百二十年目だった。彼らは入植早々、「心の拠り所にしたい」と合祀を開拓使に願い出て拒否され、その後も札幌県や道庁に申請を繰り返し却下されたと聞く。
 二つの神社は明治維新の勝者が中央と地方に君臨し、維新の負け組など貧窮移住民、民権運動の囚人、たこ労働者など様々な敗者たちが勝者の強圧の下で喘いだ北海道を象徴しているように見える。税金の無駄遣い、癒着や天下りといった今日の官をめぐる諸問題、北海道特有の官高民低、官依存は薩長藩閥政府と開拓使にその根があるのではないか。これを書く動機だった。
 小著は歴史や史料の隙間を筆者なりの推理や解釈で埋めた創作だが、大筋は史実に即している。琴似屯田兵の一人、元会津藩進撃隊組長三沢毅の半生とその周辺をたどることで明治史の一面を明らかにしたい、という意図が果たされたかどうか。読者のご批判に待つほかはない。
 北海道の土となった三沢の孫、勝彦氏から祖父の日誌など貴重な史料の閲覧を許され、詳しい話を聞けなかったら小著はあり得なかった。(後略)

プロフィール

若林 滋(わかばやし しげる)
1934年北海道生まれ。士別高校、東北大卒。読売新聞記者、関連会社役員を経て現在、北海道屯田兵制度研究会代表、北海道屯田倶楽部理事、北海道史研究協議会会員。

上記内容は本書刊行時のものです。