978-4-89115-209-3高桑 哲男 著
定価:¥3,200+税
ISBN978-4-89115-209-3  C3041
A5判/544頁/並製
[2010年3月刊行]
三つの章と索引を全文公開中!!

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概 要

受験につながる教科書数学は、大方の期待に反して、思考力・推理力・想像力ではなく、理解力・暗記力・複製力の養成科目になっている。不毛な競争に駆り立て多くの者に「敗者」のレッテルを貼り、数学嫌いを増やしているのが現実である。この状況から、ルネッサンス時代にタイムスリップしたような、優雅で新鮮な状態へ再生できる方法を伝えることができれば幸いである。(「帯文」より)

 ・5-2≠5+(-2)≠(-2)+5
 ・3>-1、ならば、-3>1
 ・1/2+1/3=2/5、2/4≠1/2
 ・0/0=1、または、0/0=0
 ・3元4次のピタゴラス数
 ・三項和フィボナッチ数列
 ・パスカルの三角形と拡散
 ・迷路パズルはメビウスの帯
 ・回転座標でじゃんけん勝負
 ・通路確保型細胞増殖モデル

目 次

1章 数と座標
2章 演算と関数
3章 四則演算
4章 分数と分数算 ⇒全文公開 (PDF、21頁)
5章 素数・原数
6章 2次方程式
7章 ピタゴラスの定理
8章 等差数列と等比数列
9章 増殖過程
10章 三角関数・対数関数・複素関数
11章 微分と積分
12章 数値積分法
13章 複素2次方程式
14章 項和数列
15章 二項係数
16章 回転座標系 ⇒全文公開 (PDF、44頁)
17章 最適化手法
18章 フーリエ級数
19章 二項分布と正規分布
20章 無限・極限 ⇒全文公開 (PDF、24頁)
21章 図形数
索  引 全文公開
参考資料

本文より

序 超受験でei一杯
(1)「なぜ数学を学ぶのか」「数学は何の役に立つのか」。多くの日本人は哲学的答えを出せず、アッサリと「入学試験科目にあるから」「受験戦争の勝者になるため」と言い放つでしょう。
少数者は、「物の大きさを測るため」「買い物の勘定を間違わないように」と答えそうです。けれども、このレベルの数学ならば、小学校で「読み書きソロバン」を教えることで、現在以上の効果を挙げられます。
(2) 小・中・高校の「教科書数学」「受験数学」が抱える問題点や悪弊を挙げてみると次のようです。
 ①基本的事項を「ルール」として押し付け、十分な理解を待たずに暗記させる。例えば、 3-2×4=-5、 5の平方根は±、 などです。
 ②内容に新味がない。四則演算・2次関数・微積分が常に主役である。
 ③授業で習った解法により、短時間で解ける問題を対象とする。
 ④試験問題には必ず明解な答えがあり、暗記した定型的解法のどれかを当てはめることで正解に到達できる。
 ⑤教科書に納得できない点があっても、教師は取り合ってくれない。「出題範囲外」の事柄や余計なことを考えては、合格の妨げになるからである。
 要するに、受験につながる教科書数学は、大方の期待に反して、思考力・推理力・想像力ではなく、理解力・暗記力・複製力の養成用科目なのです。
(3) 一方、入学試験は「学力」に優れた者を選抜する役割を持つので、本制度が効果的に機能するためには、中学生・高校生を競争の場に引き出さざるをえません。そこでは、次のような状況が生まれ、半数以上の者に「敗者」のレッテルが貼られます。
 ①他校に負けないように、ハイレベル・ハイスピードの授業がなされ、いわば「並み」の勉強をする者をふるい落とし、数学嫌いを増やす。
 ②全生徒が同レベルに達しては優劣判定ができないので、難度の高い出題をするし、理解しにくい内容・超高速解法・数学パズル、など本道を逸脱したものが増える。つまり、貴重な時間を無駄に消費させることで、敗者を作り出し、敗者であることを自覚させる。
 ③相対的成績評価なので、互いの隣人が敵となる。絶対評価でなければ、入試合格者のレベルも下がるし、不合格者のレベルは惨憺たるものになる。競争のない場でも、超ハイレベルの者は必ず生まれるし、そのような人物は受験数学とは無縁の力量の持ち主であろう。
(4) 本書の執筆目的は、大それたことに、「受験数学難民」を救済することです。つまり、前記(2)(3)の受験競争による被害者を少なくするために、以下のような手を打とうとしています。
 ①受験競争の勝者、すなわち、現大学生と卒業者には、受験数学で学び得なかった内容を補習・補修してもらうための「新」教科書を提供すること。そこには時間をかけ、かつ、必勝ルールを捨てることによってこそ獲得できる「数学力」の概要が示されます。
 ②早々と受験数学を見限った者に向けて、現行の数学教科書の内容に欠陥部分が多々あることを示すこと。これによって、一切の矛盾がなく見える数学世界も万全ではなく、「自己ルール」を作り、また、疑問には「自己解」を得るという、自力解決を試みることの可能性と正当性を伝えます。
 ③現役の教師には、「分かりやすく」教えることよりも、生徒の発する疑問に耳を傾け、共に悩む姿勢で臨むことを期待して、そのための参考教材となるアイテムを提供すること。
(5) ここで、冒頭の問い掛けに対する、著者の「自己解」を示します。答えは、「頭脳の健康」を保つためです。ただし、個人の成長過程が、次のように二段階を繰り返しながら、次第次第に進行することを前提にしています。
 1)現状Aの前に、選択肢xが出現して、その取捨の判断を迫られる。
 2)これを採択しないときはA→A、採択したときはA+x→A、となって1)の状態に戻る。
 このうち、1)と2)の中間で、AとA+xの優劣を評価するためには、二つの判断基準が持ち出されるでしょう。一つは、社会的・心情的基準であり、「国語力」による評価がなされます。もう一つが、普遍的・理知的基準であり、ここに「数学力」が発揮されます。キザな言い方をすれば、二つの判断力がともに優れているほど、「深く、豊かな生き方」がなされるはずです。
(6) 類書と比較したとき、本書が持つ特色は次のようです。
 ①数学の基本としての「数」と「演算法」について、原点に立ち戻って再構築する意図がある。
 ②類書にもよく登場する、いわば人気数学キャラクターの「ピタゴラスの定理」「パスカルの三角形」「フィボナッチ数列」について、その拡張形式の表現を試みている。
 ③直線座標系と回転座標系の構造と機能を明確にし、後者の担い手であるネイピア数e、虚数単位i、円周率、の三つについて意義づけを深める。
(7) 国語力を高めるための努力は読書によって多くの人が続けているし、何よりも日々の会話が頭脳の健康維持に有効に働きます。一方、「数学力」を高めるために参考書や問題集と取り組む人は極めてまれでしょう。
 そんな状況ではならじと、数学関連のサークル活動などで、ひと月に一回くらいの「質疑応答」の場が持たれると、私たちの頭脳は心情・知性の両面から健康でいられるでしょう。さらには、ルネッサンス時代にタイムスリップしたような、優雅で新鮮な状態に再生できるかもしれません。

プロフィール

高桑 哲男(たかくわ てつお)
1940年、北海道小樽市生まれ。北海道大学大学院工学研究科修士課程修了。工学博士。同研究科元教授。専門は環境衛生工学。著書に、「配水管網の解析と設計」(森北出版)、分担執筆に「土木計画数理」(朝倉書店)、「土木工学ハンドブック」(技報堂)、「水理公式集」(技報堂)など。一般書に、「発想練習」(中西出版)。「日本語の自学自修法」(中西出版)。「『諺』今、その謎が解けた!」(中西出版)。

上記内容は本書刊行時のものです。