ƒ978-4-89115-223-9新明 英仁 著
定価:¥17,143+税
ISBN978-4-89115-223-9  C3470
変形判/272頁/並製
[2011年2月刊行]

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概 要

本書は美術史の観点からみた「アイヌ風俗画」の総合的な研究論文を掲載するだけではなく、すぐれた「アイヌ風俗画」を集成した画集(絵画資料集)としてもご活用いただけるものです。

目 次

図版 「在住型」作家
小玉貞良
雪好
千島春里(藤鳳鳴、藤原與昌)
早坂文嶺
平澤屏山
図版補遺
平澤屏山

図版 「訪問型」作家
谷 元旦
村上島之允(朗郷)
村上貞助
松浦武四郎

論文 「アイヌ風俗画」の研究―近世北海道におけるアイヌと美術
第一章 序論
第二章 経歴と主要作品―「在住型」の作家たち
第三章 経歴と主要作品―「訪問型」の作家たち
第四章 アイヌ風俗画にみる人物像と画題設定
第五章 アイヌ風俗画の画題
第六章 作家・作品論
第七章 結論

補註
文献
平澤屏山作品一覧

掲載図版リスト
英文リスト
英文前文

本文より

まえがき
 本書は、筆者が二〇〇七(平成十九)年に総合研究大学院大学に提出した学位請求論文をもとにした内容で、独立行政法人日本学術振興会の平成二十二年度科学研究費(研究成果公開促進費)の助成金を得て刊行するものです。筆者は一九九〇(平成二)年頃から、美術館連絡協議会の花王・学芸員研究助成金の援助を受けて「アイヌ風俗画」についての調査研究を開始し、その成果をもとに、一九九二(平成四)年に北海道立旭川美術館と北海道立近代美術館の共同企画で「蝦夷の風俗画」展を開催しました。その後、二〇〇一(平成十三)年に北海道立旭川美術館で開催した「アボリジニの美術展」の時にお会いした国立民族学博物館教授(現在名誉教授)でアボリジニ研究の第一人者松山利夫先生に学位論文の執筆を勧められ、約五年間かけて美術史の観点からみた総合的な「アイヌ風俗画論」としてまとめたものです。
 本書は美術史の観点からみた「アイヌ風俗画」の総合的な研究論文を掲載するだけではなく、すぐれた「アイヌ風俗画」を集成した画集(絵画資料集)としてもご活用いただけるものです。論文の詳細については、本文を参照していただくしかないのですが、以下に簡単に目的と概要を書いておきたいと思います。アイヌは文字や絵画を描く習俗を持たないため、日本列島に住むアイヌ以外の人々(和人)がアイヌの姿や風俗を描いた絵画が、近世以前のアイヌ民族文化研究における重要な資料とされてきました。この研究では、それらの絵画を「アイヌ風俗画」と呼んで「風俗画」の一分野としてとらえ、「アイヌ風俗画」の定義、作家論、作家の分類と系譜、画題、制作の動機と需要などの観点から詳細に分析し、日本の近世美術史上における意義と魅力を考察しました。これは同時に、充分な研究が行われていない近世北海道美術の系譜と展開を明らかにすることにもつながるものでした。また、「アイヌ風俗画」の各作家の性格、活動年代、画題、技巧の巧拙、描写の正確さなどを比較検討して明らかにしたことにより、これらの絵画が資料批判を十分に行わないままアイヌ民族文化研究のうえで取り上げられている現状への注意を喚起することにつながると考えられます。本書に登場する「アイヌ風俗画」の作家は九人で、筆者はそれを「在住型」五人と「訪問型」四人の二類型に分類して論述しました。彼らの活動年代は、江戸時代中期から明治時代初期までの約一五〇年間です。なお、この論文執筆後に新たに判明した事実については、「補注」で対応いたします。 本書の刊行にあたっては、十数年間にわたり、多数の方々や機関にお世話になりました。
 まず、論文の執筆にあたり、厳しいご指導とご指摘をいただきました松山利夫先生、長期にわたりアイヌの民族文化についてのご助言をいただいた大塚和義先生(国立民族学博物館名誉教授)ならびに佐々木利和先生(北海道大学アイヌ・先住民研究センター教授)に深く感謝いたします。以上の三人の先生とともに学位論文の審査でお世話になりました佐々木史郎先生、吉田憲司先生(以上お二方とも国立民族学博物館教授)に厚くお礼申し上げます。平成二年当時の北海道立近代美術館勤務時に、筆者の上司として「アイヌ風俗画」の研究を勧めてくださった奥岡茂雄先生(札幌芸術の森美術館長)に深くお礼申し上げます。また、筆者が勤務した北海道立旭川美術館、北海道立近代美術館で一緒に仕事をしました学芸員すべての皆様に、感謝の言葉を捧げます。特に共同企画や研究の際は、五十嵐聡美さん(北海道立近代美術館主任学芸員)と土岐美由紀さん(北海道立旭川美術館学芸員)に大変お世話になりました。また、学芸員、研究者として東北大学の先輩であった井上研一郎先生(宮城学院女子大学教授)と濱田淑子先生(前東北福祉大学芹沢銈介美術工芸館学芸員)からもたくさんのご教示をいただきました。そして市立函館博物館学芸員の霜村紀子さん、花巻市教育委員会の中村良幸さん、故人となられました北海道開拓記念館学芸員の林昇太郎さんにも、いろいろと教えられ支えられました。記して感謝の言葉を捧げます。
 本書の刊行にあたっては、快く出版を受け入れてくださった中西出版と担当者の岸上祐史さんに厚くお礼申し上げます。基礎的な調査研究の助成をいただいた美術館連絡協議会と花王株式会社、そして刊行経費を助成いただいた日本学術振興会に厚くお礼申し上げます。また、「蝦夷の風俗画」展当時の調査や、その後の調査でお世話になったすべての機関や個人の方々、および本書の意義をご理解いただき、図版掲載の協力や写真の提供をしてくださった機関やここにお名前を記すことができなかった個人の方々に深く感謝の意を表したいと思います。(「まえがき」より)

プロフィール

新明 英仁(しんみょう ひでひと)
北海道立文学館学芸主幹。 1955年、札幌市生まれ、旭川育ちの道産子。北海道立旭川北高校卒、東北大学文学部東洋日本美術史学科卒。1980年、北海道立近代美術館学芸員、1982年、北海道立旭川美術館学芸員、1989年、北海道立近代美術館主任学芸員、1991年、北海道立旭川美術館学芸課長、2008年、北海道立近代美術館学芸第一課長、2010年4月より現職。専門は近世および近現代日本美術史。主要な自主企画展、共同企画展として「蝦夷の風俗画展」「美と土俗展」「木の造形・旭川大賞展」「小熊秀雄と画家たちの青春展」などを担当。著書に『ミュージアム新書 小川原脩』(北海道新聞社)、『アイヌの歴史と文化Ⅱ』(共著、創童社)など。文学博士。 上記内容は本書刊行時のものです。