978-4-89115-261-1大西 雅之・松田忠徳 共著
定価:¥1,500+税
ISBN978-4-89115-261-1  C0030
A5判/264頁/並製
[2011年11月刊行]

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概 要

地方に“ホンモノ”がなくてどこに“ホンモノ”があるのか。
北海道観光は、今こそ“脱皮”しなければならない!
“変わる意志”を持たなければならない!

目 次

はじめに

第一章 北海道には文化がある。地域を知り、地域を高めることが第一歩
  各支配人が独自に思いを持ち、地域とともに宿づくりを行う
  サービスの質を宿泊客が評価する「アンケートシステム」の導入
  「水の謌」、「森の謌」のコンセプトづくりと葛藤
  日本人が忘れかけている心根、アイヌ民族の「イランカラプテ」
 視点・論点1 二〇一二年は、日本のLCC(格安航空)元年 松田忠徳

第二章 環境を考え、食のあり方を見直す。それが観光の国際化につながる
  環境問題への対応と、その効果、「ゼロカーボンプロジェクト」
  食の良さと郷土力を生かして「競争しない個性」をつくる
  食糧自給率二〇〇%の北海道で地元の産品を活用する仕組み
  外国人を受入れる体制を整えていく「鶴雅インターナショナル宣言」
 視点・論点2 心の「鎖国」を解き放ち、新しいリゾートへ 大西雅之

第三章 人材としての外国人を視野に入れつつ、日本的なものを追求する
  効率化を進め、高配当を実現して優秀な人材の確保とサービス向上を
  現場を経験し、観光と経済を学ぶ「鶴雅観光人材養成講座」の効果
 視点・論点3 虎杖浜温泉(白老町)の源泉かけ流し宣言 松田忠徳

第四章 予防医学に基づいた長期滞在型温泉リゾートでアピールを
  航空の自由競争がもたらした弊害とLCCの進出による効果への期待
  マーケットは海外、女性、高齢者。温泉を活用した滞在型を目指して
 視点・論点4 「温泉療養保険制度」への挑戦 松田忠徳

第五章 一〇年後には四〇〇〇億円。その市場をつくるために必要な意識改革
  商品設定が自由なネット販売を推進、「インターネット事業本部」の設置
  ヒントは日本の湯治文化にあり。景気に左右されない観光地づくり
 視点・論点5 滞在型を可能にするルームチャージ制 大西雅之

第六章 東日本大震災をきっかけに見えてきた、市場の変化と観光の方向性
  内外にグレード区分を示す格付けで、世界基準を照準に据えたアピールを
  震災による顧客数の減少と環境変化 それが「滞在型」推進の動機づけに
  地方としての質、満足度を高めて新たな魅力と満足を提供していく
  温泉のエネルギーも活用して健康との関係をアピールしていく

〈あとがき〉に代えて
※本文中の脚註作成、写真 松田忠徳

本文より

はじめに 「再生」から「創生」へ。変われる者だけが生き残れる。

~(略)~
 変化の時代のなかで生き残るためには、その先を行く変化が必要である。阿寒湖温泉の「再生」から「創生」へ。既存のものを見直す時代は終わり、新たにつくり出していくこと。それには自ら生まれ変わらなければならない。
 チャールズ・ダーウィンの進化論には、「生き残るのは、強い者でもない、賢い者でもない、変われる者だ」という考え方がある。観光、旅行というものに対する意識、環境が劇的に変わっていくなかで、それを捉えて変わること、そして変わっていく勇気を持つことが必要だと痛感している。
 二〇一一年の夏にかけて、われわれ鶴雅グループでは、滞在型のための部屋売りプラン、需要が増している一人旅に対応するプラン、そして大型犬も共に宿泊できる施設の開設など、即応が可能な対策を矢継ぎ早に打ち出した。また、国際部というセクションを設けて外国からのお客さまへの対応も強化している。
 今回の「創生ビジョン」でも柱になっていることに、温泉街として滞在型の環境を整えるということがある。まずは温泉街が一体となること。そして、この動きを近隣と連携させながら阿寒湖温泉街から道東エリア、そして北海道全体をリゾート・アイランドとしていくことで、ゆっくりと余暇を楽しみたい国内の方々はもとより、広く世界へ向けた北海道のブランディングが完成していくと考えている。~(略)~

雅グループ代表 大西 雅之
<あとがき>にかえて
~(略)~
 北海道観光は二〇一一を機に変わらなければならない。外国人観光客を従来の日本人ツアー客の延長線上として、“延命装置”としているだけなら、北海道観光に明日はないだろう。“薄 利多売”北海道観光の汚名をもう返上しなければならない。
 個人客も含めて北海道の国内観光が縮むなかで、沖縄が国内、海外ともに観光客を増やしている現実と向き合う必要がある。注意したいのは、北海道のインバウンド(訪日観光客)の大半(約七五%)がツアー客なのに対して、九州ではインバウンドの約七五%が個人客であるという点だ。
 個人客の方が利益率が高いので、安定的な経営を維持しやすい。もちろん、本州、九州方面と比べると大規模ホテル・旅館が多い北海道の実状、特性を無視することはできない。中・小規模の設備の整った施設は個人客の受皿となって、インバウンドにおけるツアー客と個人客の割合をせめて六対四に持っていきたいものだ。
 もっとも、私は外国人のツアー客を否定している訳では決してない。鶴雅グループのように客単価が高ければ、それに見合った十分な対応が可能となるから、北海道の評価は高まる。ゆゆしきことは、日本人ツアーよりさらにダンピングしたアジア人に対して、北海道産や国内産の食材ではなく、中国産など輸入ものの野菜、魚介類、加工食品等を提供せざるを得ないことだ。このままでは早晩、北海道の評価は“日本一の安い観光地”というところに落ち着いてしまいかねない。
 そうならないためには、本書でも話題になったが、レストランだけでなく宿泊施設の格付けを早急に行う必要があるだろう。一ツ星の宿に三ツ星を期待するのは日本人くらいだろうから。国際化が進行しているにも関わらず、未だに国内基準しかない状態では、努力している施設は報われない。温泉業界、観光業界に蔓延している“あいまい性”は、日本の十八番でもあるが、これでは国際観光のバトルを勝ち抜けないだろう。「価格だけ見て来る客は、また価格で去っていく」ことは、世の歴史が物語っている。価格を下げない旅館は努力しているのである。本来の客はそこに価値を見い出す。遠い北海道まで来て、本国へ帰った後、北海道の「安かろう」を自慢するとは到底思えない。~(略)~
松田忠徳

プロフィール

大西 雅之(おおにし まさゆき)
鶴雅グループ代表。北海道観光振興機構副会長。2003年国土交通省認定、観光カリスマ。
1955年北海道釧路市生まれ。東京大学経済学部卒業後、三井信託銀行入社。1981年、父親が創業した阿寒グランドホテルに入社。1987年、JTBの顧客評価で最低ランクになり、送客停止宣言を受け、危機に陥るが、反撃の先頭に立ち、200室以上の大型宿泊施設では異例の「JTBサービス最優秀旅館ホテル日本一」(2002年)になり、現在の「鶴雅グループ(宿泊施設9、部屋数630室。2011年10月現在)躍進の土台を築く。1998年、同社社長に就任。北海道観光の顔である。
倒産したホテルを再生した高級旅館「あかん鶴雅別荘鄙の座」(2004年)で、全国の食通から高い評価を得て、「鶴雅グループ」のブランドを確立。2009年には「しこつ湖鶴雅リゾートスパ水の謌」、翌2010年には「定山渓鶴雅リゾートスパ森の謌」を開業し、札幌圏への進出を果たした。目下、全国で最も注目を浴びる観光経営者である。

松田 忠徳(まつだ ただのり)
文学博士・医学博士。札幌国際大学観光学部教授(温泉学、観光学)、モンゴル国立医科大学伝統医学部教授(温泉健康医学)。旅行作家、崇城大学客員教授(温泉学)。
1949年北海道洞爺湖町洞爺湖温泉生まれ。東京外国語大学大学院(修士課程)、モンゴル国立医科大学大学院(博士課程)で、第三世界の文学、モンゴル学、温泉医学等を学ぶ。日本で初めて温泉を学問としてとらえ「温泉学」という分野を切り開いた温泉教授の異名で知られる温泉学の第一人者で、温泉文化論、温泉観光学から温泉医学まで活動範囲は多岐にわたる。現在、国際的な温泉学者として活動する一方、国内では精力的に全国各地の温泉地再生の指導を行っている。
「温泉は生きている」という概念のもと、「源泉かけ流し」という言葉を造り啓蒙・普及、及び理論の構築に努め、全国各地の「源泉かけ流し宣言」を主唱。現在まで入湯した温泉は4600湯を超える。
著書に「温泉教授の温泉ゼミナール」「これは、温泉ではない」「温泉教授の日本百名湯」(以上、光文社新書)、「江戸の温泉学」「温泉旅館格付けガイド」(以上、新潮社)、「温泉教授・松田忠徳の古湯を歩く」「温泉維新」(以上、日本経済新聞出版社)、「温泉力」(ちくま文庫)、「美人力を上げる温泉術」(講談社+α文庫)、「新・日本百名湯」(日経ビジネス文庫)、「松田教授の温泉道」(中西出版)、「一度は泊まってみたい癒しの温泉宿」「温泉に入ると病気にならない」以上、PHP新書)など、130冊以上あり、温泉関係の著書はアジア諸国で翻訳出版されている。
他に、DVD「温泉教授・松田忠徳の日本百名湯」全10巻(日本経済新聞出版社)、ニンテンドーDSソフト「全国どこでも温泉手帳」(マーベラスエンターテイメント)もある。

上記内容は本書刊行時のものです。